◎泣いている、「残業代ゼロより過労死ゼロ」

 連合のスローガン「残業代ゼロより過労死ゼロ」を、2014年に初めて知った時、「労働者の気持ちにぴったり」と感動したものでした。そのスローガンが、労働者や過労死の家族らの涙で消えようとしています。

 7月13日、連合の神津里季生会長は、安倍晋三首相と会談し、「残業代ゼロ」法案(「高度プロフェッショナル」制度)の修正を要請しました。安倍首相は、「しっかり受け止める」とのべたといいます。

 同法案は、「労働時間の規制を除外する」といって、労働時間ではなく成果に基づいて賃金を支払うというものです。残業代はなくなります。対象労働者は、金融商品の開発業務や研究開発業務など“高度プロフェッショナル”な仕事にたずさわり、年収1075万円以上で、労働者の平均賃金の3倍以上、希望する者などを想定しています。

 消費税のように、小さく産んで大きく育てたように、業務対象者も年収制限も拡大させることは目に見えています。労働者を長時間労働、過労死に追いやるでしょう。

 秋に開かれる臨時国会で安倍政権は、同法案と月「100時間未満」までの残業の上限規制法案(いずれも労働基準法改定案)がセットで提案することをねらってきましたが、これを手助けするものです。

連合17メーデー
(全トヨタ労連も参加した東京の連合のメーデーで、「もう、過労死はなくそう」「インターバル規制を導入しよう」などのスローガンを書いた旗がなびきました=東京・代々木公園、17年4月29日)

 安倍政権は、2015年に国会へ「残業代ゼロ」法案を提出しましたが、2年以上にわたって審議が行われませんでした。これに先立つ14年10月28日、連合は厚労省前で集会を開き、神津会長はつぎのように訴えました。

 「毎年100名を超える方が過労死で亡くなっている現実を直視すれば、いま政府がなすべきことは『残業代ゼロ』制度を作り出すことではなく『過労死ゼロ』を実現するための施策を早急に講じることだ。関係者はそのために知恵を絞るべき。労働時間法制の改悪は、我々の総力を結集して何としても阻止しよう」

 その神津会長は、「できる限り是正しないといけない」と言って安倍首相に修正を要請したのです。修正の内容とは、別表のように「104日以上の休日」を企業に義務付ける、臨時の健康診断など4つから選択するというものです。

日経 修正
(修正のポイント=日経新聞、7月14日付から。日経は「残業代ゼロ」法案を「脱時間給」と称しています)

 この程度の修正で長時間労働が是正され、過労死がなくなるのか? 連合内からも批判が噴出。7月8日に連合で開かれた会議では、主要単産の自動車総連や電機連合などから批判が続出し、修正を容認したのは連合の逢見直人事務局長の出身単産のUAゼンセンだけだったといいます(日経新聞、14日付)。

 唐突な連合の修正要請ですが、実際には「水面下の変身」(朝日新聞、14日付)といわれるように、逢見事務局長らが安倍政権や日本経団連とひそかに接触を続けてきたといいます。

 連合内でまともな議論も行わず、安倍首相と直に取り引きするなどは労働組合のすることでしょうか。日経新聞(14日付)は、安倍政権のこんな政治的思惑を指摘しています。

 「首相サイドには、共産党との連携に傾く民進党執行部への不信感を強める連合を揺さぶるため、修正要求に応じて、民進党内の保守系議員の離反を促す意図もありそうだ」

 「残業代ゼロ」法案には、野党4党や連合、全労連などがこぞって反対してきました。安倍政権が、共謀罪法の強行や国政を私物化する森友・加計学園問題で支持率を急落させている現在、「残業代ゼロ」法案を葬り去るチャンスの時です。

 大きな声をあげたい。神津会長ら連合幹部は安倍政権にすり寄るのではなく、もう一度、「残業代ゼロより過労死ゼロ」の旗を振り、「労働者の総力を結集して阻止しよう」と訴えるべきではないか――。
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残業代ゼロ法案 | コメント(4) | トラックバック(0) | 2017/07/14 15:35
コメント
>消費税のように、小さく産んで大きく育てたように、業務対象者も年収制限も拡大させることは目に見えています。労働者を長時間労働、過労死に追いやるでしょう。

>秋に開かれる臨時国会で安倍政権は、同法案と月「100時間未満」までの残業の上限規制法案(いずれも労働基準法改定案)がセットで提案することをねらってきましたが、これを手助けするものです。

100時間規制も大きく育てる余地があるのにスッパリと無視。
扇動ばかりで矛盾だらけに。
No title
旧トヨタ自販の連中は、春日の研究部以外は、皆、夜遅くまで仕事をしていたが、過労死の話は聞いたことがない。
自販は、アメリカ式合理的発想で、激務であっても適宜休暇を取らせる。だから、過労死はなかったといえる。
今回の政府案も、経営側が、その趣旨を踏まえて提要されれば、ブログ主様のご意見は、杞憂に過ぎない。
No title
トヨタ自動車では、わかっているだけでも5件の過労死認定があります。この3月には、トヨタ系の職場で名古屋高裁が過労死と認定しました。「杞憂」どころではありません。
No title
過労死が続出していることについて、トヨタ内部で、なぜかなぜかを5回考えた管理者はいるのでしょうか?

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