◎電通の違法残業 略式起訴でなく裁判へ

 広告大手の電通(本社・東京都港区)で、入社1年目の高橋まつりさん(24)が過労自殺し、社会に衝撃を与えた事件。このことを発端にした同社の違法残業問題で、東京簡易裁判所は7月12日、電通を略式起訴ではなく裁判を開くことを決めました。

 略式起訴は、「100万円以下の罰金又は科料を科す」ことが相当とする軽微な犯罪の場合に行われるものです。正式な裁判になれば社長が出廷するといわれており、悪質な電通の違法残業の実態が明らかになります。

 労働基準法は、労働者を1日8時間を超えて働かせてはならないとしています。労働組合か、過半数の労働者を代表する者と協定を結べば、8時間を超えて働かせることが可能です(労基法36条)。

 電通の36協定は、月当たりの残業時間は70時間でしたが、まつりさんがうつ病になる前は月130時間を超えていました。こうした36協定に違反する違法残業が電通では広く行なわれていました。

 違法残業をしていたとして、法人としての電通が東京地検から略式起訴されていましたが、東京簡易裁判所が「不相当」として刑事裁判が開かれることになったものです。

 当然でしょう。電通は、まつりさんが亡くなるまでの10年間、厚労省から立ち入り調査を10回、36協定を超える違法な残業をさせていたとして是正勧告を5回も受けていた悪質な企業だったからです。

電通 本社
(電通本社=東京都港区汐留、グーグルアースから)

 裁判で社長ら幹部が出廷して、どんな働かせ方をしていたのか白日のもとに明らかにする責任があるでしょう。これまで労働基準法違反事件は、政治からも社会からも軽微なものとして扱われてきました。

 たとえば労働者の命にかかわる過労死事件です。このブログ「トヨタで生きる」(17年1月4日アップ)で指摘したように、過労死を出した企業名を公表するよう大阪労働局を相手にした裁判を、「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表が起こしたことがあります。

 大阪地裁はこれを認めましたが、大阪高裁が「社員が少ない企業の場合、企業名が開示されれば個人が特定される」などとして却下。最高裁も2013年10月、上告を棄却しました。

 まつりさんの場合も、母親の幸美さんと川人博弁護士が東京で記者会見(16年10月7日)して初めて、新入社員が過労自殺した悲惨な事件が明るみに出ました。

 まつりさんのSNSへの書き込み――「もう4時だ 体が震えるよ…」など――と、電通がとんでもない働かせ方を強いて、彼女を死に追いやったことが生々しく残されていました。

 過労死も過労死と認定されても、遺族は会社や周りに配慮して声を上げられないケースが圧倒的です。略式起訴ではなく、裁判で電通の働かせ方を明らかにする簡易裁判所の今回の決定は、大いに歓迎すべきことでしょう。
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過労死 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2017/07/13 15:54
コメント
No title
会社の顧問弁護士は違法な労務管理を知っていたと思われますが、社会的責任は何ら問われないようです。国民感情としては、納得できないのですが・・・。
No title
訴追側の検察官が部内選抜のたたきあげの副検事だった場合、電通が選任すると思われる大物弁護士の反論をフルボッコできるか、心配です。

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