◎「町いちばんの会社」

 トヨタ自動車の豊田章男社長が、トヨタが大幅な赤字を出したリーマン・ショック(2008年)の直後の09年に社長に就任して8年になります。そのトヨタの17年3月期決算の発表が5月10日に開かれましたが、同じ日に通信大手のソフトバンクも決算発表を行いました。

 同社の孫正義社長は、営業利益が1兆円を突破したことをあげ、日本で最初に1兆円になったトヨタは65年かかったが、ソフトバンクは36年で達成したと胸を張ったといいます。

 トヨタを強烈に意識し、いずれ日本1の利益のトヨタを追い抜くという思いなのでしょう。孫社長は、「情報革命で人々を幸せに」という長期経営計画「新30年ビジョン」を2010年に発表しています。

 同ビジョンで孫社長は、自分自身の「人生50カ年」計画をはじめ、30年後はソフトバンクを「世界トップ10」の会社にすること、時価総額を200兆円規模にすること、「圧倒的NO1にこだわる」「脳がちぎれるほど考えよ」などと、野心あふれるビジョンを描いています。

 一方、豊田社長は孫社長の発表の翌年の2011年3月に、「グローバルビジョン」を発表しました。729万台の販売(トヨタ、レクサスブランド)で1475億円だった営業利益(2010年3月期決算)を、750万台販売を前提にして1兆円程度の営業利益を「早期に実現」するというものでした。

 そうした目標はすでに達成し、連結ベースでは世界販売が1000万台を超え、営業利益は2~3兆円近くになっています。独フォルクスワーゲンと1、2位を争うほどになりました。

トヨタ本社 グーグルアース
(トヨタ自動車本社=グーグルアースから)

 しかし、11年の「グローバルビジョン」以後は、そうした目標の数字を示していません。「意志ある踊り場」とか、「もっといいクルマをつくろうよ」などと日本語的な目標に留めています。

 よく口にするのが「町いちばんの会社」という言い方です。昨年、VWに抜かれた世界1の座の奪還を叫ぶこともないようです。孫社長の「圧倒的NO1にこだわる」といって数字目標をあげて社員を追い立てる方法から見ると実に堅実です。

 確かに世界の自動車メーカーは、次世代車はPHV(プラグ・イン・ハイブリッド)か、EV(電気自動車)か、FCV(燃料電池車)か、人工知能を使った完全自動運転技術の行方、車は持つものではなくシェアするもの…などをめぐって激しい争いを続けています。

 豊田社長は、決算発表のあいさつで、昨年1月にアメリカに人工知能の研究開発会社TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)を設立したことなどをあげ、「今後も10年先、20年先を見据えた種まきを続けていきたい」と語りました。

 そこには孫社長のような激しい言葉や数値目標はありません。リーマン・ショック後に社長に就任しただけに、「どのような環境でも持続的に成長していける会社となることを目指してまいりました」(決算発表でのあいさつ)と手堅い語り口です。

 「町いちばんの会社」とは、大きくなりすぎたトヨタは、もう一度、クルマづくりの原点に立ち戻る必要があるということなのでしょうか? 数値目標を示して追い立て、「世界の1番」になるのではなく、「町いちばんの会社」が今のトヨタにはふさわしいというのでしょうか?
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未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2017/05/17 18:19
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