◎「トヨタの焦燥」 『東洋経済』特集

 週刊経済誌『東洋経済』が「トヨタの焦燥」という特集(4月29日・5月6日号)を組んでいる。トランプ米大統領、次世代カー、ケイレツ(系列)のトヨタを取り巻く“3つの難題”について44ページも使う力の入れ方だ。

 世界の自動車産業は、①ガソリン車に次ぐ次世代車は何になるのか、②グーグルなどネット関連企業を巻き込んだ、AI(人工知能)を基にした自動運転技術の開発、③車は持つものではなく、必要な時に借りるものという車シェア時代の到来――などをめぐって熾烈な競争をくり広げている。

 昨年、世界販売量ではフォルクスワーゲン(VW)に抜かれて、2位に後退したものの、トヨタは1000万台超を販売している。そのトヨタが熾烈な競争のなかで“焦燥”しているのではないか、というのが特集の命題だ。

 なかでも興味深かったのが「トヨタは読み違えたのか」という見出しの次世代カーの開発の物語である。現在のトヨタは、世界初のハイブリッドの量産車「プリウス」を1997年に販売してから20年になる。

 プリウスは4代目になり、プリウス以外にも30種以上にHVを広げ、世界販売累計は1000万台を超えた。日本ではホンダがトヨタと同じようにHVを販売しているが、世界で見るとHVは少数派にとどまっている。

 ガソリンと電気の“いいとこどり”をしたHVだが、本格的なエコカーへの中間技術という弱点があった。『東洋経済』の「特集」では、「トヨタはプリウスの成功体験から抜けられないでいる」というアナリストのコメントを紹介している。

12 トヨタの焦燥 東洋経済


 では、次世代のエコカーの本命は何か? トヨタは燃料電池車(FCV)の「ミライ」を世界に先駆けて2014年に発売したが、水素スタンドのインフラ整備というネックと価格が高いという2つの壁があって本命にはまだなっていない。

 「特集」では、今年2月にトヨタが発売を始めた2代目プリウスPHV(プラグ・イン・ハイブリッド)について触れている。内山田竹志会長は、発表会で「PHVがエコカーの主流になる」と断言した。

 その一方で、トヨタはHV優先で出遅れた電気自動車(EV)へ急速に開発をシフトしている。16年12月に豊田章男社長直轄の「EV事業企画室」を立ち上げ、グループ3企業から人を集めていると指摘する。

 背景には、アメリカの最大市場のカリフォルニア州で、2018年モデルから「排ガスゼロ車(ZEV)規制」が強化されるが、プリウスはエコカーの扱いからはずされることになった。

 トヨタにとってはショックな出来事であり、HV優先路線の修正を余儀なくされている。しかも、EVは電池の開発が急テンポですすみ、コスト低減と航続距離が長くなってきたこともEVに力を入れてきた日産自動車などを勢いづかせている。

 世界最大市場、中国は大気汚染が深刻で、エコカーに本腰を入れ始めている。エコカーの普及は、地球温暖化という人類共通の問題解決につながるものだ。しかし、EVなどからはエンジンがなくなり、下請けの仕事や労働者の雇用にも大きな影響をもたらすものになる。

 「特集」は、トヨタ1社だけの「焦燥」だけにとどまらない、自動車産業全体の根本的な問題を突き付けているようにも思った。ひよっとしたら、「トヨタにおれば一生安泰」という時代ではなくなるのか…。
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職場は今 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2017/04/28 11:49
コメント
No title
ブログ主様は、「EVなどからはエンジンがなくなり、下請けの仕事や労働者の雇用にも大きな影響をもたらすものになる。」と不安を示しておられますが、余剰人員を他の職種にシフトさせれば、雇用不安の問題は払拭でき、移民は不要でとなるから、悲観的な見方をする必要はないでしょう。



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