◎右派ポピュリズムの支持者は誰か? 小熊英二・慶応大教授

 トランプ次期米大統領や橋下徹・前大阪市長ら右派ポピュリズムを、だれが支持しているのか、という興味深い分析を小熊英二・慶応大教授が行っている(朝日新聞12月22日付の「論壇時評」)。

 ポピュリズムとは、国民のなかにある要求や願い、不安、感情、怒りなどを巧妙に利用し、基本的人権を無視したり、仮想の「敵」をつくってそれを既得権者と攻撃するなどして支持を広げ、政界に進出しようとする政治家や政治姿勢のことといわれている。

 小熊教授は、「論壇時評」で、「トランプ票は中以上の所得層に多い。つまり低所得層(米国ならマイノリティー、西欧なら移民、日本なら『非正規』が多い部分)は右派ポピュリズムの攻撃対象であって、支持者は少ない。支持者は、低所得層の増大に危機感を抱く中間層に多いのだ」と分析する。

 そして、「大阪市長だった橋下徹の支持者は、むしろ管理職や正社員が多い。低所得の非正規労働者に橋下支持が多いというのは俗説にすぎない」と指摘する。

 その上で、「では、何が中間層を右派ポピュリズムに走らせるのか」と問う。「それは、旧来の生活様式を維持できなくなる恐怖である。それが『昔ながらの自国のアイデンティティー』を防衛する志向をもたらすのだ」、と。

 具体的には、ある調査を引用し、「ネットで右翼的な書き込みをしたり、『炎上』に加担する人に多い属性は、『年収が多い』『子供がいる』『男性』などだ。いわば『正社員のお父さん』である」と強調する。

 結論は、「それは古い様式に固執し、その維持のためには人権など二の次と考える人である。他者と自分の人権を尊重し、変化を受け入れること。それによってこそ、健全な社会と健全な経済が創られるはずだ」と語る。

大阪市役所と淀屋橋
(大阪市役所=右の建物=と淀屋橋。この当たりに江戸時代は蔵屋敷が並び、明治以降は住友財閥の大企業が集中していた)

 トランプ氏や橋下氏らのことを考えると、うなずけることが多い鋭い論考である。大阪は、江戸時代に大名の蔵屋敷が並び、「天下の台所」といわれ日本経済の中心地になった。明治以降も住友財閥や商社など大企業の発祥地だった。東京1極集中で経済は疲弊し、生活保護者が日本1多い貧困地帯となっている。

 トランプ氏を支持したのは、ラストベルト(錆びた地帯)といわれる鉄鋼や自動車産業が栄え、衰退した五大湖周辺の白人層などに多いといわれる。トランプ、橋下の両氏の支持地盤に経済で共通性がある。

 歴代自民党政権や現在の安倍政権がすすめてきた新自由主義的な経済政策によって格差と貧困が広がり、富裕層にはますます富が集中し、貧困層が増え続けるなかで、中間層は貧困層に没落するのではないかという恐怖、不安におそわれている。

 どうすればいいのか? 円安と株高で格差と貧困を増大させた“アベノミクス”ではなく、格差と貧困をなくす経済民主主義の改革をすすめることである。それは、立憲主義に立ったまっとうな政治をつくりと同時に、「健全な社会と健全な経済」(小熊教授)をつくる道だと思う。
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その他 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2016/12/28 14:25
コメント
凄い!実際の支持率データなどの統計が一切出ていない!
これが本家本元のポピュリズムか!
No title
新聞の論評ですから、支持率などのデータは前提でしょう。

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