◎厚労省、初の「過労死白書」

 厚生労働省は10月7日、超党派で成立した過労死防止法(過労死等防止対策推進法)を受けて、初めて「過労死白書」を発表しました。白書は、カラー刷り、280ページで、ネットでも読むことができます。
 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/16/dl/16-1.pdf

 過労死は、「karoushi」と表記されるほどで、日本にしかないといわれてきました。「白書」では、1988年に弁護士らによって過労死110番が設けられるなど、1980年代後半から社会問題になってきたことにふれています。

 しかし、実際の運動は、全国に先がけて大阪で81年に「大阪急性死等労災認定連絡会」が結成されました。当時は、まだ突然死、急性死、在職死などが一般的でした。細川汀・元京都府立大学教授らが1982年に『過労死』というタイトルの本を出版しました。

 細川氏は、「過労によって生体のリズムが崩壊し、生命を維持する機能に致命的破綻をきたした状態」と考え、名付けたといいます。これによって、実態を表した過労死の言葉が定着・普及していきました。

 当時の過労死の認定件数は、厚労省の認定基準が極めて狭いものだったために、21件(87年度)、33件(90年度)にすぎませんでした。91年11月に「全国過労死を考える家族の会」が結成されるなどして運動が広がりました。「白書」で明らかにしているように、過労死の認定は96件(15年度)、過労自殺の認定(同)は93件までになりました。

70 過労死認定者の残業時間
(「過労死白書」では、過労死=脳・心臓疾患=の残業時間別認定件数を掲載しています)

 しかし、過労死の認定は請求件数283件のうちの96件、過労自殺の認定は請求数199件のうちの93件で、3分の1から半分にとどまっています。現在、トヨタとその関連会社で、裁判で争われている2件は、いずれも厚労省が却下したものです。

 過労死の立証が遺族側に負わされているなど、遺族の運動は厳しく、認定をもっと増やすためには、支援者らのいっそうの運動と厚労省の認定基準の緩和が必要です。

 「白書」では、年平均労働時間の国際比較の表が掲載されています。ドイツ、フランスは1300時間台、日本は1700時間台です。日本は、労働時間が短いパートタイムも入っています。正社員に限れば2000時間前後で、トヨタ自動車では1900時間台です。

年間総労働時間の各国比較
(「過労死白書」では、年平均労働時間の各国別推移を掲載しています)

 しかも日本では、1カ月の残業が最も長かった正社員の残業時間は、厚労省が「過労死ライン」と呼ぶ月80時間を超えた企業が、22・7%にのぼっています。日本の長時間労働と“過労死予備軍”が広がっている実態は、国際的に見ても異常です。

 「過労死ライン」の月80時間の残業とは、週の労働時間に換算すると約60時間です。1日8時間の労働に4時間の残業をすると、週5日で60時間になるからです。朝9時から働いて夜の10時ごろまで、毎日残業することになります。こんな働き方ではアウトです。

 「白書」では、アンケート(複数回答)も掲載されています。残業をするのは、「業務量が多いために」(経営者の回答で43・3%)、「人員が足りないため」(労働者の回答で32・2%)などとなっています。

 「労働生産性が低いため」(経営者の回答で4・4%)ということはあてはまらず、人を増やすことで残業を少なくし、過労死をなくす――このことが最も効果があることが明らかです。
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過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2016/10/10 15:08
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