◎正社員化殺人事件 小説『ガラパゴス』

 相場英雄・著の小説『ガラパゴス』(小学館)を読んだ。上、下2巻、600ページを超える長編ミステリーだが、一気に読ませる。非正規雇用の請負、派遣労働者が殺人を犯す。殺伐な労働現場に切り込んだ意欲作だ。

 警視庁の田川刑事に追い詰められた犯人が叫ぶ。
 「派遣からやっと正社員になれたんだ。あんたらにわかるかよ、その日暮らしの不安と人として認められないキツさがよ」

 この言葉に込めた怨念が殺人にまで行きつく。スーパーハイブリッドカーを生産するトクダモーター。そこへ派遣労働者を送り込む人材派遣会社。人件費ではなく、まるで部品のように「外注加工費」扱いされる派遣労働者。

 田川刑事は、青酸カリで殺された仲野が、最後に振り絞って書いたノートの切り端を見つける。「新城 も」と「780816」を手掛かりに日本全国へ飛ぶ。

ガラパゴス


 シャープの白亜の工場を彷彿とさせる三重県の亀山市、工場を閉鎖したソニーを思い出させる岐阜県の美濃加茂市など、派遣労働者が住むぺかぺかのアパート群に分け入り、犯人の痕跡を探す。

 仲野の故郷、沖縄県石垣島も訪ね歩く。警視庁のノンキャリアで“地取りの鬼”と呼ばれた刑事の執念が、一歩、一歩、犯人に迫っていく。読者に息をつかせない。

 「正社員という身分をもぎ取る事と引き換えに、人が殺された」――作者がこう書いたのが、この本のテーマだ。そして犯人の背後にいた自動車メーカー社長や人材派遣会社社長の実像が、腐敗した警視庁の側面ともからみあいながら、次第に明らかになっていく…。

 小説の時代的背景は、非正規労働者が激増した(20)00年代だ。小泉政権の派遣労働の規制緩和で、偽装請負や日雇い派遣、リーマン・ショック時の派遣切りが政治・社会問題になった時代である。

20 ガラパゴス 本文


 作者は、ミステリー小説の手法で、切り込んでいく。題名になったガラパゴスは、今も“ガラ携”と呼ばれるように、その島、その国・地域でしか通用しない製品のことを指す。太平洋のガラパゴス諸島が語源だ。

 亀山モデルと一世を風靡した液晶テレビが、あっという間にガラ携化していく、それは電機ばかりか、ハイブリッドの自動車も同じだと語るアナリスト。イヨタ、ハイブリッド、TGA導入、ターボ、過給機…ある自動車メーカーを想起させるような用語も出てくる。

 ミステリー小説を超えるような大きなスケールで時代を描いた『ガラパゴス』。松本清張の手法も会得した作者に、次作も期待したい。
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その他 | コメント(4) | トラックバック(0) | 2016/09/21 10:50
コメント
No title
鮎とビク ってドキュメンタリーも面白いですね。
No title
鮎とビクの紹介文を貼ろうとすると「不正な投稿です」だって。

流石に現役国会議員の不祥事を暑かったドキュメンタリーは
コメントできないように統制がかかってるのかな?
No title
それって、まったくデマですよ。いつまでしがみついているのですか?
No title
共産党「週刊誌に議員の不倫をすっぱぬかれて言論封殺に名誉毀損で訴えたけど不起訴処分で負けたのは黙っとこ」

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