◎変質したNHK「クローズアップ現代」

 インタビュー相手がいやがる質問をしつこくし、問題の本質を視聴者に届けることで人気のあったNHK「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターが3月末で番組を降板した。

 4月からは、日替わりキャスターになった。13日放送の「“新リストラ時代”到来!? 業績好調なのになぜ」は、テーマに興味を持ったから見た。製紙会社トップの王子製紙で、生産ラインの調整を任され、グループ会社の部長を務めるなど、20年にわたって会社に貢献してきた社員が突然、戦力外通告される話だ。

 王子製紙は6年連続の黒字だ。退職を拒否した社員に、人材派遣会社・テンプスタッフへ通って、別の仕事を探すよう命じられる。その社員だけでなく、40~50代の社員が退職勧奨にリストアップされていた。

60 クローズアップ現代 新リストラ時代
(NHK「クローズアップ現代」から)

 テンプスタッフは、1人当たり60万円で王子製紙から引き受けていたが、その金の一部は国の「労働移動支援助成金」が含まれていた。日本共産党や「しんぶん赤旗」が問題にしてきたリストラ助成金だ。

 番組では、黒字でもリストラの実態をリアルに伝えていた。ここまではよかった。ところが2人のゲストのうちの「厚切りジェイソン(IT企業役員・タレント)」氏のコメントはとんでもないものだった。

 「日本の社員が守られ過ぎてると思いますね」「僕は個人の責任だと思いますね…積極的にいい仕事をする、社会に貢献するような形を自分から探り出すべきだと思います」

 個人責任で、黒字でもリストラやむなし論を展開した。それに対し、キャスターの切り込みはなかった。国谷裕子・前キャスターは、雑誌「世界」5月号で、「インタビューという仕事」を掲載している。

 このなかで23年間の「クローズアップ現代」を振り返っている。国谷氏がアメリカで大学生だったころ、ニューヨーク・タイムズは、ベトナム戦争に関するペンタゴンの秘密文書を掲載した。

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 司法省は「国家の安全保障に関する問題」だとして掲載の差し止めを命じたが、連邦最高裁は言論の自由を最優先にし、差し止めはできないとした。国谷氏は、そうしたなかテッド・コペルがキャスターを務めるABC「ナイトライン」を知った。

 コペルのインタビューは、政府高官に対しても辛辣な質問をしつこく浴びせるもので、そこから問題の本質を視聴者に届ける姿勢だった。国谷氏は、これを原点に「クローズアップ現代」でインタビューを続けた。

 安倍政権は2014年7月1日、これまでの憲法解釈をひるがえし、集団的自衛権の行使ができることを閣議決定した。国谷氏は、「クローズアップ現代」で、菅義偉官房長官にインタビューした。そのやりとりを「世界」で生々しく再現している。

 インタビュー部分は14分ほど。「憲法の解釈を変えるということは、ある意味では、日本の国のあり方を変えることにもつながるような変更だと思いますが…」と菅官房長官にしつこく迫る国谷氏。

 残る時間30秒を切ったなかでも、国谷氏は「そもそも解釈を変更したことに対する原則の部分での違和感や不安をどうやって払拭していくのか」と迫る。その切迫した質問を振り返り、「もっともっと聞いてほしいというテレビの向こう側の声を感じてしまったのだろうか」と国谷氏は書く。

 このインタビューは、菅官房長官を激怒させたと伝えられている。そして3月末での国谷氏の降板につながっていったようだ。日本の言論の自由度ランキングが世界の国の72位にまで下がってきた現在、国谷氏が求めた“インタビューの持つ言葉の力”を、今こそテレビ局やキャスターは学ぶ時ではないか。
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戦争と平和 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2016/05/09 09:23
コメント
No title
テレビ局やキャスターは共産党などの候補者が公職選挙法に違反してても問題視せずに放置
違法行為の証拠を抱えながらも黙認して報道してるんだから困ったもんだ。
共産党側もそれを「違法だと分かってるけど問題ない」とグルになってるから更に質が悪い。
No title

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