◎原発、初めて運転差し止め決定

 司法は生きていた――滋賀県の住民が訴えていた関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の稼働差し止めについて、大津地裁(山本善彦裁判長)は3月9日、稼働中の原発では初めて運転を差し止める画期的な仮処分決定を出しました。

 福井地裁が15年4月14日に、同じ高浜原発3、4号機の差し止め決定を出していましたが、同年12月24日に同じ福井地裁の別の裁判長がこれを取り消していました。

 国民の半数以上が原発ゼロを願うなかで、世論に冷や水を浴びせたものでした。今回の決定で司法は生きていたという実感です。関電は、決定を受け10日に運転を差し止めます。

大津地裁 高浜差し止め
(高浜原発の稼働を差し止めた大津地裁の決定を知らせる弁護団ら=3月9日、テレビ朝日から)

 大津地裁の決定は、「関電の主張や証明の程度では、新規制基準や設置変更許可が、直ちに公共の安寧となると考えることをためらわざるを得ない」と“ためらわざるを得ない”といいながらも、差し止めを認めた勇気ある決定です。

 明日11日は、福島第一原発事故から5年になります。安倍政権の原発再稼働に待ったをかける決定に、原発ゼロの運動は力を得たことになります。豊田市から東へ約100kmにある中電浜岡原発(静岡県御前崎市)も原子力規制委員会の審査を待っています。

 高浜原発から大津までは約70km。豊田市に住む私たちも、大津地裁の決定は大きな力になります。「福島原発事故を経験した国民は、事故の影響が及ぶ範囲の圧倒的な広さと、避難に大きな混乱が生じたことを熟知している」(大津地裁決定から)。

             ◇

 日経新聞が掲載した仮処分決定の要旨は次の通りです。

 【立証責任の所在】関電は東京電力福島第1原発事故を踏まえ、原子力規制行政がどう変化し、規制が具体的にどう強化され、関電がどう応えたか主張と証明を尽くすべきだ。原子力規制委員会が設置変更許可を与えた事実だけで、主張や証明があったとは言えない。

 【過酷事故対策】福島原発事故の原因究明は、建屋内の調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況だ。津波を主な原因として特定できたのかも不明だ。同様の事故を防ぐ見地から安全確保対策を講じるには、原因究明の徹底が不可欠。この点に意を払わないのが関電や規制委の姿勢なら、新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚える。

 福島第1原発の安全確保対策が不十分だったのは明らかだ。災害が起こるたび「想定を超える」災害だったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うなら、十二分の余裕を持った基準にすることを念頭に、危険性を見落とした可能性があるとの立場で新規制基準を策定すべきだ。

 関電の主張や証明の程度では、新規制基準や設置変更許可が、直ちに公共の安寧となると考えることをためらわざるを得ない。

 審査過程を検討すると相当の対応策を準備しているとは言える。ただ、事故に備えた設備が新規制基準後に設置されたかは不明で、ディーゼル発電機の起動失敗例は少なくない。非常時の備えで完全を求めるのは不可能でも、このような備えで十分だとの社会一般の合意が形成されたと言ってよいか、ちゅうちょせざるを得ない。

2月26日 豊田市 原発ゼロ
(豊田駅前で行われた原発ゼロの行動、2月26日)

 【耐震性能】活断層について、関電の調査が海底を含む周辺領域全てで徹底的に行われたわけではない。基準地震動で十分な主張や証明がされたとは言えない。

 【津波に対する安全性能】1586年の天正地震に関する古文書に、若狭に大津波が押し寄せ、多くの人が死亡した記載がある。関電の調査結果から、大規模な津波が発生したとは考えられないとまで言っていいのか、疑問がある。

 【テロ対策】新規制基準で対応すべき範囲を超える。

 【避難計画】関電が直接問われるべき義務ではないが、福島原発事故を経験した国民は、事故の影響が及ぶ範囲の圧倒的な広さと、避難に大きな混乱が生じたことを熟知している。国家主導で具体的な避難計画が早急に策定される必要があり、避難計画を視野に入れた幅広い規制基準が望まれる。過酷事故を経た現時点では、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家に発生していると言ってもよいのではないか。

 事故発生時の責任は誰が負うか明瞭にし、新規制基準を満たせば十分とするだけでなく、避難計画を含んだ安全確保対策にも意を払う必要がある。

 【被保全権利の存在】高浜3、4号機は、福島原発事故を踏まえた過酷事故対策の設計思想や、外部電源に依拠する緊急時の対策方法に関する問題点、耐震性能決定に関する問題点について危惧すべき点があり、津波対策や避難計画にも疑問が残る。

 人格権が侵害される恐れが高いのに、安全性の確保について関電が主張や証明を尽くしていない部分がある。被保全権は存在する。

 【保全の必要性】3号機は1月29日に再稼働し、4号機も2月26日に再稼働した。保全の必要性が認められる。
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原発ゼロへ | コメント(1) | トラックバック(0) | 2016/03/10 10:07
コメント
No title
この記事:会社も非を認めたんですが、死んだ人は帰ってこない。二度と同じ悲劇を繰り返さないで欲しい。

http://news.nifty.com/cs/domestic/societydetail/jiji-2016031000563/1.htm


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