◎沖縄からのリポート 2015年8月

①辺野古の海に1組の親子

 沖縄県は、8月10日から9月9日までの1カ月間、安倍政権との集中協議期間に入った。名護市辺野古への新基地建設をめぐっての話し合いの間は、ボーリング調査を中断する。この期間に沖縄へ行った。次は沖縄の現状リポート――

                ◇

 辺野古の浜辺の防波堤に初めて立った。映像で見る通り、エメラルドグリーンの海が広がっていた。こんな海は愛知県にはない。見あきることがない。その時、1組の親子が浜にあらわれた。子どもたちが波とたわむれている。

辺野古海1
(辺野古の青い海。向こう側の白い建物がキャンプ・シュワブの兵舎)
 
 親子の向こうに、アメリカ海兵隊の基地、キャンプ・シュワブが広がる。海にまで突き出た基地のフェンス。基地には、水陸両用の戦車道路や巨大な兵舎…。辺野古の海は、基地と隣り合わせにある。

辺野古海3
(浜辺で遊ぶ親子。金網の向こうがキャンプ・シュワブ)
 
 安倍政権は、この辺野古の海を埋め立て、V字型の滑走路を持つ新基地を建設し、米軍に提供するというのだ。世界1危険な普天間基地に代わるというが、耐用年数200年というから老朽化した普天間基地に代わる新基地である。
 
 実際、海兵隊員が敵の海岸に上陸する揚陸強襲艦の岸壁(271・8m)まで建設される。

 基地建設のためのボーリング調査などは停止され、作業台船などは撤収した。立ち入り禁止区域を示すフロートは、辺野古の浜からは見えない。対岸の瀬嵩の海岸に回らなければ見えない。

辺野古海2
(辺野古の海へ出発する船)

 辺野古の浜から1隻の小さな船が辺野古の海へ漕ぎ出した。辺野古のたたかいを支援している人々9人が乗っている。サンゴやジュゴンのいる海を体感し、フロートのそばまで行くことができる。残念ながら予約しないと入船できないという。

 地元紙「琉球新報」を買い求めた。作家の百田尚樹氏が「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない」と発言して大問題になった2紙のうちの1紙である。

 「『沖縄を領土としてしか見ていない』 知事、辺野古推進を批判」
 「『(普天間基地の)5年内停止』移設前提 知事反発『北部殺す』」

 中谷元防衛相や菅義偉官房長官との会談を1面トップで大きく報道している。全国紙との扱いとは大違いである。2人とも辺野古しかないというというが、翁長雄志知事は、これを厳しく批判している。

辺野古海4
(辺野古の海岸に建てられたテントでたたかいの様子を聞く人々)

 翁長知事が、「沖縄は自ら基地を差し出したことがない」と安倍首相らに語ったことを思い出した。1組の親子が浜辺で遊んでいる風景を眺めながら思った。「辺野古の海を絶対につぶさせてはならない」、と。

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②侵略者はいらない!

 米軍基地、キャンプ・シュワブの正面ゲート前に回る。暑い。汗が噴出する。ゲート前にテントがズラリと並んでいる。看板があった。

 「新基地断念まで座り込み 不屈 408日」

 もう1年以上も座り込んでいるのだ。そのなかに、沖縄の“文子おばあ”(85)がいた。沖縄へ行く直前、ドキュメンタリー映画「戦場ぬ止み」を見た。新基地建設用の資材を基地へ運びこむトラックの前に、体を投げ出す白髪のおばあ。

辺野古ゲート1
(座り込む沖縄のおばあ=中央=)

 それが文子おばあだ。映画とまったく変わらない白髪。そのしわに刻まれた、戦前の沖縄の地上戦から生き、たたかった歴史。「頑張ってください」とがっちり握手。その人なつこい笑顔が目の前にあった。

 その時、テントからいっせいに人々が基地の金網に向かって走る。基地から迷彩色のトラックが出てくる。手に手に、「新基地阻止」などのプラスターを持ち、海兵隊員に向かって、「ユー・アー・インベーダー・ウイ・ドント・ニード・ユー」(侵略者はいらない)と叫び、大きく抗議の手を振る。

辺野古ゲート2
(軍用トラックに抗議する人たち)

 その迫力におされた。ここは、基地建設反対の最前線なのだ。安倍政権との“休戦中”といえども、抗議の姿勢はなんら変わらない。午後3時半、テントに座り込む人々、全国からの支援の人たちがゲート前でデモを始めた。

 真夏の太陽は容赦しない。じりじりと差し込むような日差しが痛い。「海兵隊員も基地も失せろ」「平和を返せ 土地を返せ」「安倍政治は許せない」などのプラカードを掲げ、シュプレヒコールする。

辺野古ゲート3
(ゲート前でデモする人々)

 人々の表情は明るかった。昨年の名護市長選、知事選、衆院選挙で新基地反対派は圧勝した。沖縄の民意は、「新基地建設反対」なのだ。これまでの保守、革新の枠を超え、沖縄の財界、労働界は団結した。

 安倍政権は、追い詰められているのだ。その確信が人々の顔にあふれていた。沖縄は戦前、唯一の地上戦を強いられた。日本の米軍基地の面積の74%までが沖縄に集中している。

 沖縄は、本土の盾にされてきたのではないか? 旅行中、“ウチナンチュー”(沖縄の人)と“ヤマトンチュー”(本土の人)という呼称をよく聞いた。心に突き刺さる言葉だった。


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③道の駅かでな

 宜野湾市の普天間基地は、豪雨の中だった。滑走路のそばにある嘉数高台公園は、普天間基地を一望にできる高台にある。しかし、突然に降り出した豪雨で、基地から飛び立つ飛行機は見当たらない。もちろんオスプレイも見えない。

 公園のまえに1軒のそば店があった。沖縄旅行中、昼食は沖縄そばと決めていたが、この店のそばは最高であった。沖縄そばは、本土のそばとうどんの中間にあたると思う。麺は太麺だ。腰のある麺がうまい。

 レンタカーを嘉手納基地へ走らせる。同基地を一望できるのが“道の駅かでな”である。南南西から北北西への方角に、4000m級の2本の滑走路がある極東最大の米空軍基地だ。道の駅は、北北西の滑走路の端近くにある。

嘉手納1
(嘉手納基地から飛び立つ戦闘機)

 4階建ての屋上が展望台になっている。キーン、文字通り耳に突き刺さるような金属音をたててF-15Cイーグル戦闘機が滑走路を走り、飛び立った。駅の3階が基地の学習展示室になっており、そこにヘッドホンで旅客機などと戦闘機の音を聴き比べるのがあった。

 戦闘機の爆音は、旅客機などと比べ耳を突き差し、腹にずしんと響く。日常生活では耐えられない。嘉手納町は、町の面積の実に83%が基地と弾薬庫地区として接収されている。基地と共存して暮らしていくことは想像できない。

嘉手納2
(嘉手納基地)

 道の駅の人に話を聞く。オスプレイも時々見るという。それは、弾薬庫から普天間基地などに運んでいるのではないかという。実際、屋上から基地を眺めているとさまざまな軍用機が飛び立っていく。

 KC-135R空中給油機などだ。他に、E―3Bセントリー空中早期警戒管制機、AV-8Bハリアー11攻撃機…など米軍の戦闘機が常駐し、飛来する。

 ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争…アメリカの侵略戦争のたびに嘉手納基地を飛び立っていく戦闘機。ここは戦争の最前線基地なのだ。安倍首相は、「戦争法案」(安保法制)の必要な理由として、安全保障環境の変化をあげ、中国や北朝鮮の脅威をあげる。

 ちょっと待ってほしい。沖縄の米軍基地は、核兵器が秘密裏に保管されてきたのは周知の事実である。嘉手納をはじめとする米軍基地の戦闘能力は、中国や北朝鮮の比ではない。しかも、沖縄の海兵隊は殴り込み部隊である。

嘉手納3
(嘉手納基地の模型。住宅と隣り合わせ)

 中国や北朝鮮は、沖縄の米軍などを脅威として軍拡をすすめてきた。お互いに抑止力を高めるといって軍拡競争をくり広げている。そこへ憲法9条を持つ日本が、戦争法案で集団的自衛権の行使などをして米軍とともに銃口を構えれば、中国、朝鮮もさらに抑止力を強めるだろう。

 嘉手納基地から飛び立つ戦闘機を見ながら考えた。


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④敵も味方も「平和の礎」に

 沖縄旅行で、どうしても見たかったものの1つが「平和の礎(いしじ)」である。太平洋戦争・沖縄終結50周年を記念して1995年に完成した。毎年、沖縄戦が終わった6月23日、歴代首相も出席して追悼と平和のへの誓いが行われる。

 安倍首相が出席した今年の追悼式では、世界3大通信社の1つ、仏AFPが「米軍の沖縄駐留に不満を持つ地元住民らが、檀上にあがった安倍首相に『帰れ』などのやじを飛ばした。日本で首相が直接市民からやじられることはまれだ」と伝えた。

礎1
(立ち並ぶ礎)

 礎は、沖縄へ初めて旅行した時にはなかった。礎の建つ平和祈念公園は、沖縄の地上戦の最後のたたかいになった南部戦跡のなかにある。その先は、断崖である。

 沖縄戦などで亡くなった約24万人余の人々の名前が刻みこまれた刻銘碑が放射状・屏風状に延々と118基も続く。戦死者の数の多さを実感できるつくりかたであった。

 南部戦跡を案内してくれた元教師(68)は、姉の名前を探すがすぐに見つからなかったほどだ。アメリカ軍に追われた住民は逃げまどい、姉は2歳半で亡くなったという。元教師は、その刻まれた名前をそっとなでた。もちろん、生前の姉は覚えていない。沖縄の人々は、家族の誰かを失っている。

礎2
(礎に刻まれた米軍兵士の名前)

 そうした刻銘碑のなかに、米国、英国、台湾、南北朝鮮の人々の名前もあった。米国は、海軍、海兵隊、陸軍などの軍人だ。つまり沖縄戦でなくなった、日本からいえば“敵兵”も弔っていることになる。2度と沖縄戦のような悲惨な戦争をなくしてほしいという願いが痛いほど伝わってくる。

 ひめゆり平和祈念資料館で、生き証人として今も来館者に語っているのが津波古ヒサさん(87)だ。「戦争だけは絶対だめです。人殺しですから」と話してくれた。

 自然洞窟の糸数アブラチガマへ、ヘルメットをかぶり懐中電灯を頼りに入った体験は強烈だった。天井からひっきりなしに水がしたたり落ちてくる真黒な洞窟。ここに負傷兵と住民約1000人が避難していたという。

礎3
(断崖にある礎)

 うめき声、叫び声が洞窟に響き、腐敗した遺体にはうじ虫…生き地獄だったという。両眼を摘出した負傷兵が、奇跡的に生き残り、その人の証言を聞き取ったと元教師は語ってくれた。

 南部戦跡を回りながら戦争について考えた。戦争とは――①人間最大の愚かな行為である、②しかし、日本でいえば、階級がなかった縄文時代以前に戦争はなかった、③だから戦争は、人間の手でなくせる。それをかかげたのが憲法9条だ…と。


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⑤ジャングルのそばで24時間座り込み

 名護市からレンタカーで北上し、海岸線からひたすら山の中へと入っていく。米軍がジャングル戦を想定した訓練をしているという北部訓練場へ向かった。道なき道を行くようなところかと考えていたら、まったく違っていた。

 舗装された2車線の道路が山のなかへ分け入っていくのだ。この道路は、北部訓練場への軍用道路だったのだ。車で約1時間半、やっと座り込みテントが見えてきた。

高江1
(座り込む人たち)

 沖縄県東村高江。ここに、安倍政権は米軍のヘリコプターの着陸帯、「ヘリパッド」を新たに建設しているのだ。返還される代わりに新たに4カ所6個のヘリパッドをつくろうとしている。

 防衛省沖縄防衛局は、2007年7月に工事を強行。14年3月には、集落からもっとも近いN4地区のヘリパッドを完成させた。今年1月、安倍政権は先行供与の閣議決定をしたため、オスプレイの本格的訓練が始まった。

 「ヘリパッドいらない住民の会」やこれを支援する人々は、ゲート前にテントを張り、昼も夜も24時間体制で抗議と監視体制を続けている。6月28日には、「高江座り込み8周年報告会」が開かれた。その粘り強さは驚きだ。

高江2
(米軍基地のゲート)

 座り込みをしていた「高江ヘリパッド反対現地行動連絡会」の共同代表の仲村渠(なかんだかり)政彦さんに話を聞いた。テントからは見えないがオスプレイなどが飛び回っていると語る。米軍のヘリには、機体の一部に劣化ウランや放射線を出すストロンチウム90を使っているという。

 米軍は、イラク戦争などで劣化ウラン弾を使ってきた。そのために異常児が生まれている。北部訓練場など北部には沖縄本島の60%をまかなう水がめ、ダムがあちこちにある。そのダムで米軍は訓練し、ヘリが墜落する事故も起きている。

 決して沖縄北部だけの問題ではなく、沖縄全体の命にかかわる問題だと仲村渠さんは語る。「夜も2~3人で、交代で泊まりこんでいます。寝袋で寝たり、自動車で寝たりしています。へびもムカデもでますよ」と笑う。学者タイプの冷静な人だ。

 こうした人たちが、もう7年以上も座り込んで、ヘリパッド建設に反対しているのだ。辺野古もしかり。米軍基地と隣り合わせで住んだことがなかった自分にとって、衝撃の4日間だった。

高江3
(高江の店の沖縄そば)

 沖縄県庁で、524頁もある「沖縄の米軍基地」(沖縄県知事公室基地対策課)という資料集を貰った。無料だった。「沖縄の米軍基地マップ」もいっしょに。マップに米軍基地が色別で落としてある。

 陸軍、海軍、海兵隊、空軍…米4軍の基地面積をカラーで見ると、その広大さにあらためて驚く。那覇と名護市を結ぶ高速道路も、キャンプ・ハンセンの中を通っていた。

 沖縄の現状をあまりにも知らなかったことを痛感した。この目で見たこととともに、資料などを読み込み、沖縄の人々に寄り添わねばならないと思った。

 安倍政権との集中協議は9月9日に終わる。その先はどうなるのか? ウチナンチューは、保守、革新の枠を超えて団結という宝を手にした。戦前と戦後の70年の苦闘をへて。どんなことがあっても決して屈しないだろう。

             ◇

 この沖縄リポートは、一挙にアップします。9月1日~5日分までの5回分です。 管理人

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戦争と平和 | コメント(11) | トラックバック(0) | 2015/08/31 11:27
コメント
No title
海兵隊員に向かって浴びせる言葉
これじゃあ、ヘイトと何も変わらない。
ヘイトに反対する共産党さん、これは流石に
やめるべきでしょ。
それとも、在日の皆さんは守って
「海兵隊員は人にあらず」ってこと?
No title
これhttp://toriton.blog2.fc2.com/blog-entry-3575.html
に関する見解やコメントがほしい。
辺野古がダメなら、これもダメだよね。
No title
ついでにこっちhttp://ameblo.jp/netouseiji/entry-11995824054.html
も。

反対派もやりすぎじゃないんですか?
No title
辺野古の海岸線にテントを建てずっと活動の反対派の皆さん、これって違法じゃ無いの?誰の許可を得てテントを張ってるんですかね。教えて下さい。警察が違法行為を見逃してるのも問題がありますが・・。
No title
3分でいいですから、ウチナンチューの痛みに心をはせてください。
No title
本人の意思ではなく、使命で日本に駐留している
海兵隊員が侵略者と言われる心の痛みも
分かってあげて下さい。
No title
辺野古の大山ゲート前にテントで交代で見張ってるそうですがこれも公道ですから違反ですよね。トヨタ共産党の皆さんも指摘して下さい。戦争反対、基地反対を叫ぶのいいですがルールを守って下さいと。
No title
沖縄女児暴行20年(毎日新聞 9月3日付)

 1972年の本土復帰後、沖縄での米軍関係者による犯罪は2014年までに計5862件。このうち殺人や強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は約1割の571件に上る。

◆沖縄で起きた米軍関係者による女性対象の主な事件
1995年9月 沖縄本島で米兵3人が女子小学生を車で拉致して暴行
2000年7月 沖縄市で米海兵隊員がアパートに侵入して女子中学生にわいせつ
01年6月 北谷町で米空軍兵が20代女性に暴行
02年11月 具志川市で米海兵隊員が女性に暴行未遂
03年5月 金武町で米海兵隊員が10代女性に暴行
05年7月 沖縄市で米空軍兵が女子小学生にわいせつ
08年2月 北谷町で米海兵隊員が女子中学生に暴行
10年8月 那覇市で米海兵隊員がアパートに侵入して20代女性にわいせつ
12年8月 那覇市の路上で米海兵隊員が40代女性にわいせつ
12年10月 沖縄本島で米海軍兵2人が20代女性に暴行
違憲
辺野古強行移転こそが憲法違反ですが。

移転拒否が民意で示されました。

それでも移転を強行したいのならば、憲法95条を適用するべきです。
そもそも公道は国民の共有資産であり、だからこそ国民の政治的市民活動の場に相応しい。

国民の共有資産である公道での政治的市民活動が違法であるとの根拠が是非知りたいものだ。
No title
政治的市民活動はヨシとしても、それによって
関係のない人の市民生活を脅かすような行為は
謹んでもらいたいです。

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