◎「まったく問題ない」と強弁 安倍首相

 司馬遼太郎に「この国のかたち」というエッセイがあり、「統帥権」(軍隊の最高指揮権)に触れたところがあります。

 「統帥権がしだいに独立しはじめ、ついには3権(立法・行政・司法)の上に立ち、一種の万能性を帯びはじめた。統帥権の番人は参謀本部で、事実上かれらの参謀たち(天皇の幕僚)はそれを自分たちが“所有”していると信じていた」

 軍部の独走をこう指摘しています。“司馬史観”は、日露戦争を美化したり、天皇の戦争責任をあいまいにするなど問題はありますが、軍部の独走については厳しく書いています。

 日本共産党の小池晃参院議員が、参院安保法制特別委員会(8月11日)で暴露した「戦争法案」(安保法制)先取りの自衛隊の内部文書は、シビリアンコントロール(文民統制)を危うくし、戦前の軍部独走になるのではないか、と危惧されるような内容でした。

 ところが安倍首相は、「問題あるとは全く考えていない」などと8月21日の小池議員の質問に強弁しました。新ガイドラインで新たに設けるとした「同盟調整メカニズム」内に、「軍軍間の調整所」(米軍と自衛隊のこと)の設置を記していることについても、首相は「便宜的な表現であり、問題あるとは考えていない」と答えるありさまでした。

ANN(テレビ朝日) 小池質問
(ANNニュース=テレビ朝日=から)

 内部文書は、朝日新聞(8月20日付)や東京新聞(同20日付)などが社説で取り上げるなど、大問題になっていましたが、それに安倍首相は当然視したのです。朝日社説は、次のように指摘します。

……
 資料が明確に示すのは、日米の軍事的な「一体化」がいっそう進む方向性である。

 ▼平時から利用可能な常設の同盟調整メカニズム(ACM)の中に「軍軍間の調整所」を設置。要員派遣の検討が必要

 ▼南シナ海での情報収集、警戒監視と偵察などの関与のあり方について、今後、ワーキンググループなどを活用して検討

 自衛隊と米軍が日常的に緊密な連携をとり、日米共同計画を策定し、共同訓練を重ねることで、抑止力を高める――。そんな将来像が浮かぶ。

 だが、そこで日本のシビリアンコントロール(文民統制)は確保されるのか。不測の事態の際、米軍の現場レベルの軍事的な判断に引っ張られないか。次々と疑問がわいてくる。

 政府が国会であいまいな答弁をしてきた南シナ海での対米協力についても「検討する」と明記しているが、日本がどこまで踏み込むのかは難しい問題だ。日本海や東シナ海の警戒が手薄にならないか。防衛費が拡大することはないか。
……

 内部文書は5月に作成され、衆院の審議入り(5月26日)の日に、自衛隊幹部350人を集めた会議で使われていました。朝日社説は、「法案を成立させてはならない」と強調します。小池質問を伝えた「しんぶん赤旗」を紹介します。

……
 日本共産党の小池晃議員は21日の参院安保法制特別委員会で、戦争法案の成立を前提に、自衛隊統合幕僚監部が詳細な部隊運用計画を記載した内部文書を作成していた問題について、安倍晋三首相を直接ただしました。

 首相は「(法案を)具体化していくべき検討課題を整理すべく、分析や研究を行うのは当然だ」。「問題あるとは全く考えていない」と強弁しました。

 小池氏は「一省庁の問題ではなく自衛隊という実力組織だ。軍隊を独走させてはいけないというのは戦前の教訓だ」と反論。「内容は国会で全く説明していないものばかりだ。国民と国会を愚弄(ぐろう)するものだ」と批判しました。

小池質問 8月21日
(安倍首相に迫る小池晃参院議員の動画)

 また首相は「防衛大臣の指示のもと、その範囲内で行われたものだ」と述べ、文民統制は完遂していると発言。小池氏は、中谷元・防衛相が5月に作成された文書の内容を8月まで把握していなかった事実をあげ、「(自衛隊の)暴走以外の何物でもない」と強調しました。

 同文書は、新ガイドラインで新たに設けるとした「同盟調整メカニズム」内に、軍軍間の調整所の設置を記しています。首相は「便宜的な表現であり、問題あるとは考えていない」と答え、自衛隊を「軍」と記すことを当然視しました。

 小池氏は「軍を持たないという憲法を持つ国の首相が、『軍』と書くことを、便宜的な問題でかまわないと(いうことが)許されるのか」と指摘。首相が3月にも自衛隊を「我が軍」と発言したことにふれ、「(首相は)憲法をないがしろにし、自衛隊の中でも憲法も国民も無視した議論が行われていることを示すことに他ならない」と批判しました。

 小池氏はさらに内部文書は、米軍等の「武器等防護」に関し、自衛隊の武器使用基準である「ROEの策定」と記述していることについて、「米軍と武器使用基準を共有することになる」と言及。「統幕内部文書から見えるのは、まさに自衛隊を米軍と肩を並べて海外で戦争する集団に変えようとするものだ」と強調しました。

 このような文書を「問題ない」とする安倍首相と中谷防衛相。小池氏は「責任は極めて重大だ」と強調するとともに、自衛隊統合幕僚長の河野克俊氏の証人喚問を要求。改めて戦争法案の廃案を主張しました。
……

 小池参院議員の質問の動画は、日本共産党のホームページで見ることができます。
http://www.jcp.or.jp/web_mov/

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戦争と平和 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2015/08/25 10:56
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