◎“毎月評価”で毎月賃金変わる? トヨタ、最大2・5万円の差が付く成果主義賃金の導入提案

 トヨタ自動車が、工場の労働者(技能職)に最大で2万5000円の差が付く成果主義賃金を導入しようとしています。会社の提案に合意したトヨタ労組は、8月28日の評議会で採決するとしています。

 この成果主義賃金は、2014年7月以降、労使検討委員会や賃金分科会で議論が続き、今年5月に会社が最初の具体案を労組に示しました。職場討議をへて、労使検討委員会などで再度議論、手直ししてまとまったものを7月30日の評議会で組合員に提案することになったものです。

 賃金は大きく変わりますが、そのポイントは、労働者の“働きぶり”を「規律性」「協調性」「積極性」「責任性」の4つで評価する「技能発揮給」を新たに設けることです。

 “働きぶり”は、技能発揮考課点であらわし、次の6段階にするとしています。
 +4点 「期待を大幅に上回り、職場の模範となる」
 +3点 「期待を大幅に上回る」
 +2点 「期待を上回る」
 +1点 「期待どおり」=標準点
  0点 「期待を下回る」
 -1点 「期待を大幅に下回る」

6段階の考課点
(6段階の考課点=トヨタ労組の「評議会ニュース」から)

 標準額は7万円で、1点あたり5000円です。最高の+4点評価では8万5000円、最低の-1点では6万円となるために、最大で2万5000円もの差が付くことになります。

 会社の最初の提案では、1点あたり1万円だったために、最大で5万円もの差がつくことになっていましたが、職場から懸念の声が出て変更になりました。

 また、「顕著な頑張り」には、10人に1人に加点原資と1点を設けるとしていましたが、労組の「より幅広く、強弱をつけて報いる」との提案で5人に1人へと変更になりました。

 評価の期間については、「直近の働きぶり(毎月)」としていることから、賃金が毎月変わる可能性があります。導入時期は16年1月からで、技能発揮給の変動開始は16年7月からとしています。

 労組からは、「評価に対する公平性・納得性が十分得られていないのではないかという懸念」「マイナスの考課点を付点された被考課者の意欲が減退することへの懸念」「技能発揮考課を導入することで、チームワークが悪化するのではないか」という意見が職場から多くあがってきているという指摘がありました。

 また、60歳以降の働き方についても、あらたに「上級SP(スキルド・パートナー」を設けるとしています。現在のSPは、1年契約で65歳までで、賃金は6割程度に激減します。「上級SP」は、現役社員と同様か、それ以上の働きぶりが期待される人が対象で、基本的に賃金を変えないとしています。

 トヨタが5月にこの成果主義賃金を提案した時、このブログ「トヨタで生きる」で、その内容をアップしました。その記事に次のようなコメントが寄せられました。

 「中日新聞には労働組合は経営側に一定の理解を示しつつ『評価の結果次第で賃金水準が下がることは組合員の安心感に影響する』と伝えている。組合も懸念しているんであれば、反対する姿勢が必要でしょう。頑張りすぎて過労死の温床になりかけない制度だと思います」

 多くの組合員は、導入に不安の気持ちをもっています。トヨタ労組は「職場での活発な議論をお願いします」と呼びかけているように、導入の可否について徹底した論議が必要でしよう。

 トヨタは、工場労働者に続いて事務・技術職にも成果主義賃金を導入する方向で、7月23日に第1回労使検討委員会を開きました。

 検討委員会でトヨタは、「飛躍的な生産性向上をめざさなくてはならない」「『1分1秒たりとも決してムダにしない』高い意識を持ち…『極限の成果を追求』しなければならない」などと、社員に「極限の成果」を求めています。

出勤するトヨタ労働者
(出勤するトヨタ労働者)
                                   ◇

 日本の賃金制度は、大きくいって、①年齢、勤続を重ねることで賃金が上昇する「年功序列賃金」、②仕事の成果で賃金を決める「成果主義賃金」があります。

 成果主義賃金を企業が導入する最大のねらいは、労働者に支払う賃金総原資を抑えたり、減らしたりしながら、労働者同士を競い合わせ、企業業績をあげようというものです。

 このため労働者は、賃金を奪い合う競争を強いられます。実際、トヨタの今回の成果主義賃金でも、「+4点~-1点の6段階で評価」するとしており、労働者は+4点に向けて猛烈に競争させられることになります。

 労働者は、企業から高い目標を押し付けられ、競争、競争に追われます。導入した企業では、チームワーク労働がうまくいかず、長時間労働やサービス残業、「心の病」などが増えています。

 日本の大企業でもっとも早い1993年に成果主義賃金を導入し、年功部分を全廃したのが富士通です。ところが労働者は、失敗を恐れて長期の高い目標に挑戦しなくなったためにヒット商品が生まれなくなったり、地味な通常業務がおろそかになりトラブルが頻発、自分の目標達成で手いっぱいで、問題を他人におしつける――などが相次ぎました。

 このため労働者の働く意欲は低下し、チームワークも乱れるなど弊害が噴出、富士通はくり返し手直しを余儀なくされています。



 この記事は、8月7日アップの予定でしたが、都合により前日にアップしました。
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職場は今 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2015/08/06 21:51
コメント
No title
裁量権がない方々に成果主義云々がおかしい。富士通の失敗を研究したのでしょうか?もしかすると、この成果主義の導入で現場のモラールを下げて、会社の衰退をもたらそうとしてるのかもしれない。お坊ちゃま社長の追い落とし策か?

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