◎元駐日ドイツ大使 原発事故で書いたこと

 『ドイツ大使も納得した、日本が世界で愛される理由』(幻冬舎、15年1月発行)が売れ行き好調だといいます。東日本大震災当時、ドイツの駐日大使だったフォルカー・シュタンツェル氏の著書です。

 同書を読んで、びっくりしました。福島第一原発事故(11年3月11日)の1週間後の3月18日、東京のドイツ大使館の機能を、大阪のドイツ総領事館に移したというのです。ドイツ政府の指示だったといいます。

 ドイツ政府は、福島第一原発事故を、それほどの危険な事態だと認識していたのです。当時、仙台に住んでいた歌人の俵万智さんが子どもを連れて、沖縄に移住したのをはじめ、東京に住んでいた女性のかなりが子どもを連れて地方へ避難しました。

 先日、来日したドイツのメルケル首相は、福島第一原発事故を知って、直ちに原発から撤退する「政治決断」をしたことを、改めて語りました。2022年までにドイツから原発をなくし、再生可能エネルギーへシフトするという考えを日本で講演しました。

10 元ドイツ大使の著書


 フォルカー・シュタンツェル元大使は著書で、ドイツでは「2013年現在、再生エネルギーの電力消費全体に対する割合は23・5%まで拡大。2014年には25%に達するのではないかとすら言われています」とのべています。

 そして、ドイツ政府は現在4つの課題、①一般家庭や企業の負担軽減をめざす、再生エネルギー法改正、②ドイツレベルと欧州レベルのエネルギー政策の調整、③北ドイツの風力で発電した電力を、工業が盛んなドイツ南部や西部の電力消費地に届ける送電網の整備、④エネルギー貯蔵技術の研究開発の推進――に直面していると指摘します。

 その上で、「原発事故後のドイツの世論は、エネルギーシフトのためであれば、ある程度のコストはいとわないという考えを示した」と語ります。

 メルケル首相の「政治決断」が、どんなに力になったかを語ったものです。ドイツ国民に、エネルギーシフトへの展望を大きく示したと同時に、それに向けて国民のエネルギーと科学者の英知を結集できることを示した――を書きつづっているといえるでしょう。

 ひるがえって原発事故を起こした日本はどうでしょうか。福島第一原発は、数十年もかかる廃炉に向けて、高濃度の放射線とたたかいながら毎日、約1万4000人が作業をすすめています。

 立ちはだかるのが1日に約300トンも発生する汚染水処理問題です。凍土方式は行き詰まっています。しかも、東電は、汚染水が海に流れ出ていたのを、またまた隠していました。

 廃炉に向けての科学者の英知の結集も、具体的な方策が見えていません。そうした深刻な事態が4年も続いているのに、安倍政権は川内原発(鹿児島県)を皮切りに再稼働へ突き進もうとしています。

 メルケル首相のように、原発ゼロへの「政治決断」をしないどころか、再稼働へまっしぐらでは、再生可能エネルギーと福島第一原発の廃炉に向けて、国民と科学者のエネルギー、英知を結集できないでしょう。

 はじめに、原発ゼロへの「政治決断」ありきです。フォルカー・シュタンツェル元大使の著書を読みながら痛感しました。
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原発ゼロへ | コメント(3) | トラックバック(0) | 2015/03/20 09:06
コメント
No title
管理人さんは、 上田 耕一郎って人をご存知ですか?
No title
原発を活用すると「政治決断」をしたんだから日本の現状はむしろ当然だと思われます
No title
日本の問題は決断しても「一切」責任を取らないところにあるのですね。そりゃどんな「決断」だってできるさ。お笑いだ

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