◎電通の違法残業 略式起訴でなく裁判へ

 広告大手の電通(本社・東京都港区)で、入社1年目の高橋まつりさん(24)が過労自殺し、社会に衝撃を与えた事件。このことを発端にした同社の違法残業問題で、東京簡易裁判所は7月12日、電通を略式起訴ではなく裁判を開くことを決めました。

 略式起訴は、「100万円以下の罰金又は科料を科す」ことが相当とする軽微な犯罪の場合に行われるものです。正式な裁判になれば社長が出廷するといわれており、悪質な電通の違法残業の実態が明らかになります。

 労働基準法は、労働者を1日8時間を超えて働かせてはならないとしています。労働組合か、過半数の労働者を代表する者と協定を結べば、8時間を超えて働かせることが可能です(労基法36条)。

 電通の36協定は、月当たりの残業時間は70時間でしたが、まつりさんがうつ病になる前は月130時間を超えていました。こうした36協定に違反する違法残業が電通では広く行なわれていました。

 違法残業をしていたとして、法人としての電通が東京地検から略式起訴されていましたが、東京簡易裁判所が「不相当」として刑事裁判が開かれることになったものです。

 当然でしょう。電通は、まつりさんが亡くなるまでの10年間、厚労省から立ち入り調査を10回、36協定を超える違法な残業をさせていたとして是正勧告を5回も受けていた悪質な企業だったからです。

電通 本社
(電通本社=東京都港区汐留、グーグルアースから)

 裁判で社長ら幹部が出廷して、どんな働かせ方をしていたのか白日のもとに明らかにする責任があるでしょう。これまで労働基準法違反事件は、政治からも社会からも軽微なものとして扱われてきました。

 たとえば労働者の命にかかわる過労死事件です。このブログ「トヨタで生きる」(17年1月4日アップ)で指摘したように、過労死を出した企業名を公表するよう大阪労働局を相手にした裁判を、「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表が起こしたことがあります。

 大阪地裁はこれを認めましたが、大阪高裁が「社員が少ない企業の場合、企業名が開示されれば個人が特定される」などとして却下。最高裁も2013年10月、上告を棄却しました。

 まつりさんの場合も、母親の幸美さんと川人博弁護士が東京で記者会見(16年10月7日)して初めて、新入社員が過労自殺した悲惨な事件が明るみに出ました。

 まつりさんのSNSへの書き込み――「もう4時だ 体が震えるよ…」など――と、電通がとんでもない働かせ方を強いて、彼女を死に追いやったことが生々しく残されていました。

 過労死も過労死と認定されても、遺族は会社や周りに配慮して声を上げられないケースが圧倒的です。略式起訴ではなく、裁判で電通の働かせ方を明らかにする簡易裁判所の今回の決定は、大いに歓迎すべきことでしょう。
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過労死 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2017/07/13 15:54

◎第88回メーデー 名古屋過労死家族の会の内野博子さんが訴え

 5月1日は、世界の労働者がいっせいにたたかいの声をあげたメーデー。日本では全国308カ所で行われ、名古屋市では第88回愛知県中央メーデーが伏見の白川公園で開かれた。

 今年は安倍政権が「働き方改革」として過労死ラインの「月100時間未満」まで働かせる改悪を行おうとしている。また、戦前の治安維持法の現代版の「共謀罪」法案を提出しているだけに、「8時間働けば暮らせる賃金を」「市民と野党の共闘で安倍『暴走』政治STOP」などのスローガンが掲げられた。

メーデー12017


 会場入り口では、日本共産党のもとむら伸子衆院議員をはじめ県議団や名古屋市議団が1列に並んで参加者を激励し、ともにたたかおうと訴えた。

 集会では、愛知県労働組合総連合(愛労連)の榑松佐一議長や日本共産党、自由党、社民党、新社会党の野党の代表があいさつ。

メーデー2 2017
(あいさつする愛労連の榑松佐一議長)

 また、「名古屋過労死を考える家族の会」の世話人代表になった内野博子さんが「働き方改革」に対する批判をした。参加者が2つのコースに分かれて市内中心部の栄へ向けてデモ行進をした。

 参加者は、「8時間は仕事のために。8時間は休息のために。残りの8時間は私たちの好きなことのために。そして8時間でまともに暮らせる賃金を」と訴えた。

メーデー3 2017


 8時間労働制を掲げてアメリカの労働者が1886年に立ち上がったメーデーの原点に、今こそ私立ち帰る時だと思った。

                 ◇

 内野さんのあいさつは次の通りです。

 おはようございます。名古屋過労死を考える家族の会の代表世話人の内野博子です。よろしくお願いします。

 2002年2月に夫がトヨタ自動車で過労死してから、早15年が経ちます。来年は17回忌です。夫の労災認定を求めて労基署に労災申請して認められず、その後、2007年に行政裁判で認められてからも既に10年の月日が流れました。

 その後、いくつもの過労死裁判の支援をしたり、過労死防止法の成立のためにできる範囲で頑張り、過労死防止のためにも尽力しました。しかし、過労死は一向になくなりません。

 そんな中、3月13日、経団連と連合の間で、労基法の時間外労働の上限規制等に関する労使合意が結ばれました。

 この中に「休日労働を含んで、単月は100時間を基準値とする」とありましたが、100時間とは、過労死認定基準で、亡くなる一カ月前の残業時間が100時間以上の場合は過労死認定になるという過労死ラインの時間です。

 つまり、上限を100時間にするということは、法律で過労死を認めると同じことなのです。私たち家族会は2日後、日本労働弁護団主催の緊急院内集会に参加し、上限時間を許すな!と口々に訴えました。

 しかし直後の17日の働き方改革実現会議で、安倍総理によって「100時間」が「100時間未満」に訂正されただけで、その合意が認められてしまいました。1分減らしたところで変わりません。安倍総理をかっこよく見せる茶番にしか見えませんでした。

メーデー4 2017
(訴える過労死家族の会の内野博子さん)

 そもそも、この働き方改革実現会議に過労死を考える家族の会のメンバーは入っていません。全国家族会の会長の寺西さんがこう言われていました。「一番、過労死を知っている私たちを入れてくれないのはなぜなのか」と。

 日本経団連は「働き方改革」で「36協定の上限規制」が実現した場合、それに合わせて「高度プロフェッショナル制度」(残業代ゼロ法案)の導入と「裁量労働制」の拡大を前提条件とする、と言っているそうです。

 これは、上限規制がアメで、高度プロフェッショナル制度と裁量労働制がムチ、とのことで、アメとムチをセットで国会で通そうという考えのようです。しかしながら、上限規制が100時間では何のアメにもなっていないんです。

 労働基準法の基本的な残業の上限は月45時間です。中小企業にとって繁忙期もあるかもしれませんが、命には代えられません。大切な家族を過労死させるような法律は絶対許せないんです。

 ましてや、例外を認める特別条項を結んでいた場合、過労死しても労災認定されなくなる恐れさえでてくるのです。

 先日、(トヨタ関連の)テーエスシーの三輪裁判が残業時間100時間未満で労災認定されました。また、岡崎の高校教師の過労死裁判も100時間未満で勝ちました。これは、残業時間だけで判断されたわけではなく、仕事の質の過重性も考慮されて総合的に判断されたのです。

 しかし、上限が100時間で法制化された場合、裁判官は法律に基づいて判断を下すのですから、これらの裁判でも認められなかった可能性もあります。このところ、電通の高橋まつりさんの過労死事件が大きく報道されています。愛するこどもを亡くす親の悲しみは計りしれません。

 私もまだ2人の子どもたちを育てています。子どもたちが社会に出るまで、あと4年。これ以上、悲しい思いをしたくありません。皆さま、これからも過労死防止、過労死認定にご理解、ご協力をよろしくお願いします。
過労死 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2017/05/02 18:54

◎命の問題 ちゃぶ台返しすべきではないか

 過労死ラインの上限時間を許すな!――17春闘の集中回答日だった3月15日、首相官邸前では「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表ら家族会のメンバーが抗議の声をあげました。

 安倍政権は明日17日の「働き方改革実現会議」で、繁忙期は「特例」として「月100時間未満」などという残業時間の上限規制(法律)を打ち出そうとしています。家族会は厚労省の定める、死亡1カ月前の“過労死ライン”と同じだと強く批判しています。

 家族会はこの日、参議院議員会館で開かれた過労死弁護団全国連絡会議や日本労働弁護団とともに反対集会を開きました。愛知県からは、夫がトヨタ自動車堤工場で過労死し、名古屋地裁で労災と認定された内野博子さん(47)らが参加しました。

過労死家族 東京新聞0315
(首相官邸前で抗議する家族会=3月15日、東京新聞から)

 トヨタ関連の企業で働く夫の過労死を名古屋高裁で認めさせ、さらに厚労省に最高裁の上告を断念させた三輪香織さん(40)。「85時間余」でも過労死と認めさせました。中日新聞(14日付)で、「100時間未満」について、「残業が当たり前という意識がつづくのでは」と危機感を語っています。

 「100時間未満」については、日本経団連とともに労働組合の全国組織・連合(神津里季生会長)が合意しています。神津会長は、経団連と労使交渉をしてきましたが、「労使関係は片方だけが万々歳にはならない。不満はあるが、ちゃぶ台返しはできない」(15日の記者会見で)と伝えられています。

神津会長
(連合の神津里季生会長)

 事は労働者の命にかかわる問題です。労働組合が“過労死ライン”と同じ残業時間を認めていいのか? ちゃぶ台返しをすべきではなかったか――。

 過労死、過労自殺で労災と認められた労働者は、15年度で合わせて189人にものぼります。「100時間未満」の上限規制では、これからも犠牲者を生む可能性があります。

 トヨタ労組など連合に加盟する組合は、「“過労死ゼロ”宣言」(15年3月末で9000組織)をしています。連合は、家族会の声に真摯に向き合い、「100時間未満」について、再考すべきではないでしょうか。
過労死 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2017/03/16 09:42

◎トヨタ系 三輪さんの過労死認定確定 厚労省が上告断念

 トヨタ系の会社で働いていた三輪敏博さんの過労死(死亡当時37歳)が名古屋高裁で認定されましたが、厚労省が3月9日、上告を断念したために判決が確定しました。

 名古屋高裁での判決は2月23日。上告期限(2週間)ぎりぎりの9日夕方、厚労省が上告をあきらめたという知らせに、裁判に訴えていた妻の香織さん(39)は、「支援していただいたみなさんのおかげです。ありがとうございました」と喜びの声を語りました。

 敏博さんの過労死から5年半。半田労基署や名古屋地裁で過労死と認められないなかでも2人の子どもを育てながら、名古屋高裁で画期的な逆転勝訴となりました。

 そして、三輪さんや支援する会の上告しないでの要請や日本共産党の小池晃参院議員(書記局長)の厚労省政務官への要請(3月7日)などで、ついに高裁判決を確定させたのです。


三輪さん 20150211
(トヨタ総行動で支援を訴える三輪香織さん=2015年2月11日、豊田市)

三輪さん 20160316 名古屋地裁敗訴
(名古屋地裁で敗訴した時の三輪香織さん=2016年3月16日)

三輪さん 20170223
(名古屋高裁判決で勝利し、水野幹男弁護士=右=、岩井羊一弁護士と喜ぶ三輪香織さん=2017年2月23日)

 敏博さんは、トヨタテクノクラフト(本社・東京、トヨタが100%出資の子会社)の関連会社、テー・エス・シー(同社の100%出資の子会社)のチームリーダーでした。

 敏博さんは、トヨタテクノクラフトの愛知工場(東海市)で働いていました。おもな仕事は、トヨタの救急車の防振ベッドの組立・架装でしたが、連日、プリウスの試作現場へ応援に行くなど多忙をきわめていました。

 亡くなった2011年は、東日本大震災のばん回生産で、節電を理由にトヨタと関連会社は7~9月まで木金休み、土日出勤という変則勤務を実施していました。

 敏博さんの生活リズムは大きく崩れ、うつ病も発症し、同年9月27日、自宅で虚血性心疾患で亡くなりました。香織さんは、半田労基署に労災申請しましたが12年10月、却下されました。

 香織さんは、労基署の決定を取り消すよう名古屋地裁へ厚労省を相手取って提訴しました。厚労省の過労死認定基準は、亡くなる1カ月前の残業は「おおむね100時間」ですが、厚労省側は85時間と算出。香織さんは、サービス残業を含めて99時間と主張してきました。

 しかし、名古屋地裁は、厚労省側の算出を認め、「過重な労働とはいえない」とのべ、三輪さんの訴えを退けました。

 これに対し名古屋高裁の藤山雅行裁判長は、残業は「少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働負荷である」と認めた上で、さらに次のように指摘しました。

 「これに加えて、時間外労働の時間帯において休憩時間が確保できていなかった時間があること、終業時刻後に時間外労働をしていた時間が存すること…うつ病による早期覚醒の症状が加わって…発症前1カ月間、睡眠時間が1日5時間程度の睡眠が確保できない状態…うつ病にり患していない労働者が100時間を超える時間外労働をしたのに匹敵する過重な労働負荷を受けたものと認められる」

 藤山裁判長は、100時間に満たなくとも、サービス残業やうつ病による睡眠時間の減少などを総合的に判断し、1審判決をくつがえして労災と認めたものです。

 安倍政権は、「働き方改革」と残業の上限規制を検討していますが、日本経団連は、「特例」として月100時間まで認めるよう圧力をかけています。名古屋高裁判決が確定し、85時間でも過労死と認められたことで、100時間の残業がとんでもないことであることが明確になりました。

 過労死の認定を求める請求件数は15年度で283件ですが、このうち認定されたのは96件、過労自殺は請求件数199件のうち93件と3分の1から半分にとどまっています。

 三輪高裁判決が確定したことは、労基署、裁判所で運動している遺族や支援の人々にとって大きな力になるでしょう。
過労死 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2017/03/10 13:03

◎トヨタ系、三輪さんの過労死認める 高裁で逆転勝訴

 三輪香織さん(39)、名古屋高裁での過労死の労災認定、本当によかった! 夫・敏博さんの過労死(死亡当時37歳)から5年半、2人の子どもを育てながら、よく頑張りました。厚生労働省に最高裁へ上告させないよう、もう1歩です。

 2月23日、トヨタテクノクラフト(本社・東京、トヨタが100%出資の子会社)の関連会社、テー・エス・シー(同社の100%出資の子会社)のチームリーダーだった三輪さんへの判決がありました。

 敏博さんは、トヨタテクノクラフトの愛知工場(東海市)で働いていました。おもな仕事は、トヨタの救急車の防振ベッドの組立・架装でしたが、連日、プリウスの試作現場へ応援に行くなど多忙をきわめていました。

 亡くなった2011年は、東日本大震災のばん回生産で、節電を理由にトヨタと関連会社は7~9月まで木金休み、土日出勤という変則勤務を実施していました。

 敏博さんの生活リズムは大きく崩れ、うつ病も発症し、同年9月27日、自宅で虚血性心疾患で亡くなりました。香織さんは、半田労基署に労災申請しましたが12年10月、却下されました。

50 勝訴した三輪香織さん。右は水野弁護士
(名古屋高裁で勝訴した三輪香織さん=中央、2月23日)

 香織さんは、労基署の決定を取り消すよう名古屋地裁へ厚労省を相手取って提訴しました。厚労省の過労死認定基準は、亡くなる1カ月前の残業は「おおむね100時間」ですが、厚労省側は85時間と算出。香織さんは、サービス残業を含めて99時間と主張してきました。

 しかし、名古屋地裁は、厚労省側の算出を認め、「過重な労働とはいえない」とのべ、三輪さんの訴えを退けました。この日の名古屋高裁判決で、藤山雅行裁判長は、残業は「少なくとも85時間以上」とした上で、次のように指摘しました。

 「直近1カ月は1日5時間程度の睡眠を確保できない状態。うつ病でない人の100時間超の時間外労働に匹敵する過重な負荷だった」と認め、1審判決をくつがえして労災と認めたものです。

 「100時間」に満たなくとも、うつ病による睡眠時間の減少など総合的に判断したものです。素晴らしい判決ではないですか。厚労省側の上告期限は2週間(3月9日)です。香織さんや支援の人たちはこの日、厚労省愛知労働局へ上告しないよう申し入れました。

過労死 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2017/02/24 11:57

◎「しんぶん赤旗」日曜版 電通過労自殺事件特集

 このブログ「トヨタで生きる」では昨日、広告大手の電通での過労自殺事件などを受けて、厚労省が発表した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の全文を紹介しました。

 「しんぶん赤旗」日曜版は、電通事件が明るみになった昨年秋、「電通 繰り返す過労死」の3ページ特集を組みました。厚労省のガイドラインをいかすためにも、改めて同特集を紹介します。

日曜版 電通過労死1

30 日曜版 電通過労死2

30 日曜版 電通過労死3


                ◇

 この記事は、2月4日にアップする予定でしたが、都合により前日にアップしました。
過労死 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2017/02/03 17:56

◎研修や学習も労働時間 厚労省がガイドライン

 厚生労働省は2017年1月、広告大手、電通での過労自殺事件などを受けて、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を公表しました。

 電通の新入社員、高橋まつりさん(24)は、15年12月、過労自殺に追い込まれました。月約105時間もの残業を強いられてうつ病を発症し、自殺しました。

 ところが電通側の勤務記録は、まつりさんが亡くなる直近の残業時間は、10月が69・9時間、11月が69・5時間、12月が69・8時間でした。労働基準法の労使協定(「36協定」)で定められた月70時間をわずかに下回るものでした。

 電通では、トヨタ自動車のカードリーダーと同じフラッパーゲートが導入され、出退勤がコンピューターで記録されていました。しかし、「私的情報収集・自己啓発などの名目で業務として認められていなかった」(母親の幸美さん)のです。

 電通は、まつりさんの過労自殺の責任をとって社長が辞任し、代わって新社長になった山本敏博新社長は、「社員が過去のCM映像を視聴したり、担当企業の資料を見たりする時間は『自己研鑚』として労働時間と認めてこなかった」(朝日新聞、2月3日付)ことなどを改めるとしています。

 厚労省のガイドラインは、使用者が次のようなことがないかを確認するよう求めています。

 「労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること」

 ガイドラインは、このほかに、研修や学習の名目で社内にいたと社員が申告しても、上司の指示があった場合は、「労働時間」として扱うよう明記するなど具体例を示しています。

 電通にはトヨタと同じ「1時間ルール」というものがあります。トヨタでは、カードリーダーの記録と残業時間の自己申告との間で、1時間以上の違いがある場合、勤怠入力システムに駅伝のような「HUREAI活動」など業務外(「例外」)である旨のコメントを入力し、上司が承認すれば、どれだけでも社内にいることができます。

 私的情報収集、自己啓発、自己研鑚、自主活動…わたしたちの職場のまわりにこうした言葉があふれています。電通過労自殺事件を受けて、労働時間のあり方を明確にした厚労省のガイドラインの全文を掲載します。

25 厚労 時間ガイド1

25 厚労 ガイド2

25 厚労 ガイド3

25 厚労 ガイド4



過労死 | コメント(6) | トラックバック(0) | 2017/02/03 10:37

◎電通 過労自殺事件で和解 自己啓発の名でサービス残業

 広告大手の電通で、新入社員の高橋まつりさん(24)が過労自殺し、社会的大問題になった事件で、電通とまつりさんの母親の幸美さん(54)は1月20日、和解しました。和解には、石井直社長が出席しました。

 電通は、解決金を支払い18項目の再発防止策を取ることで合意しました。再発防止策は残業時間の削減や、自己啓発などで会社にいることを原則禁止するなどが柱です。

 幸美さんは、石井社長に次のように訴えたといいます。

……
 娘が死ぬほど辛かった、死の原因となった連続の深夜残業・休日出勤。これらの業務が私的情報収集・自己啓発などの名目で業務として認められていなかったこと。

 このことが原因で、娘の残業申告時間は月70時間に収まっていました。そのため、娘は産業医との面談も受診もしていませんでした。これらが業務として認められていたら、残業時間を正確に申告することが許されていたら、娘はどこかで誰かに救われていたかもしれません。娘は死なずにすんだかもしれません。
……

 幸美さんは、「会社と合意書調印にあたって」の文書を発表しました。このなかで、「私的情報収集・自己啓発などと扱い業務として認めていなかったが、会社は、これを改め、サービス残業をなくすことを約束した」とのべています。

 「私的情報収集・自己啓発などと扱い業務として認めていなかった」――この「私的」「自己啓発」という言葉は、企業で氾濫しています。そうした名で、実際にはサービス残業が強要されています。

電通 和解 写真
(まつりさんの遺影をかかげて記者会見する母親の幸美さん=1月20日、毎日新聞から)

 幸美さんは、さらに電通が次のような約束をしたと語ります。

……
 会社が、深夜残業の原則禁止など、改革をすでに始めていること、
 会社が、パワハラ防止のために全力を尽くすことを約束したこと、
 会社が、業務の改善と改革の実施状況の報告を、今後、遺族側に定期的に行うことを約束したこと、
 業務の改善と改革に向けて、役員・管理職が研修会を行い、遺族側の話を直接聞く場を設けることを約束したこと、
……

 さらに安倍政権に対し、次のように求めています。

……
 36協定延長時間の上限規制、サービス残業に対する罰則を含む規制の強化、サービス残業を助長するような固定残業制の禁止、勤務間インターバル制度の導入など、働く人を守るために法律改正をしてほしいと強く希望します。


 政治の責任として求めているものです。日本共産党は、幸美さんの願いをすでに政策としてかかげています。民進党や自由党、社民党など野党とともに、安倍政権に強く迫っていきます。
過労死 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2017/01/21 09:33

◎電通 10年間で立ち入り調査10回、是正勧告5回

 入社1年目の女性社員、高橋まつりさんを過労自殺(当時24歳)に追い込んだ広告大手の電通。まつりさんが亡くなるまでの10年間で、厚労省から立ち入り調査を10回、36協定を超える違法な残業をさせていたとして是正勧告を5回も受けていたことが共同通信の調べで明らかになりました(12月29日配信)。

 厚労省からこれほどまでに立ち入り調査、是正勧告を受けながら放置し、まつりさんを過労死させた電通の企業体質にあ然とするばかりです。電通は、16年の「ブラック企業大賞」(弁護士ら11人が選考委員)に選ばれましたが、厚労省がこうした悪質な企業名を公表しなかったことも問われます。

 厚労省はこれまで、労働基準法などに違反した企業について、書類送検された段階で企業名を公表。昨年5月以降は、大企業を対象に「月100時間超の違法残業が1年間に3事業場で見つかった場合」は、送検前の段階でも公表してきましたがわずか1件にすぎません。

 まつりさんの過労死が社会に衝撃を与えた12月26日、厚労省はやっと、月80時間を超える違法な時間外労働によって社員が過労死や過労自殺(未遂含む)した大企業について、別の事業場でも①同様の過労死・過労自殺が起きて労災認定された、②月100時間超の違法残業も見つかった――場合などに公表することを明らかにしました。

電通本社とゆりかもめ
(電通本社=右のビル=。手前は、ゆりかもめ。東京都港区汐留で)

 過労死を出した企業名を公表するよう大阪労働局を相手にした裁判を、「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表が起こしたことがあります。大阪地裁はこれを認めましたが、大阪高裁が「社員が少ない企業の場合、企業名が開示されれば個人が特定される」などとして却下。最高裁も2013年10月、上告を棄却しました。

 このため、15年度で過労死は96件(15年度)、過労自殺は93件が労災として認定されていますが、企業名は闇の中です。

 電通では、1991年にも入社2年目の男性社員(当時24歳)が過労自殺しています。遺族の訴えに最高裁は00年3月、電通の安全配慮義務違反と認めました。電通は、遺族と和解し、再発防止を約束していましたが、まつりさんを過労自殺させました。

 まつりさんの過労自殺が問題になり、電通で過労死認定がもう1件あったことが明らかになり、これまでに合わせて3件の過労死が確認されています。トヨタ自動車でも、弁護士らの調べで5件の過労死認定が確認されています。

 電通のような悪質な企業名が公表されていたならば、まつりさんのような悲劇は防げた可能性があります。厚労省の企業名公表は、まだ不十分であり、日本から過労死をなくするためには、もっと積極的に企業名を公表することが必要です。
過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2017/01/04 10:16

◎「深夜の仕事が夜景をつくっている」

 大都市の夜景の美しさをほめたたえる人は多い。年末・年始は、夜が長いこともあり、イルミネーションが心を慰める。しかし、そんな余裕がなく、睡眠時間を削って働く人間にとっては、まったく違った風景に見える。

 大手広告会社の電通で、新入社員の高橋まつりさん(24歳)が過労自殺して12月25日で1年がたった。クリスマスの日だった。まつりさんが亡くなって1年になる25日にあわせ、母親の幸美さん(53)が手記を公表し、メディアが大きく扱った。そのなかに次のような一節があった。

 「会社の深夜の仕事が、東京の夜景をつくっている」

 まつりさんが母親に語っていた話だという。48階建ての深夜の電通本社(東京都港区汐留)から見た東京の風景だろう。電通だけでなく、あちこちで深夜まで働く人々が東京の夜景をつくっているという思いからだろう。

 東京の電車は、夕方6時ころと午後9時ころ、それに終電の午前1時前後が猛烈に混む。特に終電は、乗れないほど混む。こんな異常な風景のなかで、まつりさんは働き、電通に入社して1年足らずで自ら命を絶った。

汐留21時
(電通本社がある東京・汐留の午後9時過ぎの風景)

 母親の手記は、涙なしに読めないものだった。「過労死」という言葉が日本に生まれて30年余。「カローシ」という言葉で世界語になった。今でも年間、約200人もの人々が過労死・過労死自殺で労災認定を受けている。

 まつりさんは、「もう(午前)4時だ。体が震えるよ…しぬ、もう無理そう。つかれた」などの言葉をSNSに残した。昨年10月に130時間、11月に99時間の残業をした末に、命を絶った。

 日本の正社員の年間総労働時間は、1900時間台で止まったままだ。ドイツやフランスより約500時間も長い。所定労働時間が減らないし、残業時間も減らない。

 日本から長時間労働をなくすべきだ、と国会で迫った先駆的な質問がある。日本共産党の志位和夫委員長が2015年2月20日の衆院基本的質疑だ。トヨタ自動車の2件の過労死事件を詳細に取り上げながら、残業を厚労大臣告示にあるように「月45時間」までとする法的規制を安倍首相に迫った。

 安倍首相は、「法定にするということについては、さまざまな観点から、働く人の健康確保を含め、慎重に検討すべき課題であると考えております」と答弁した。

 安倍首相は、「慎重に検討すべき課題」というだけで、実行するとは答えなかった。その安倍首相、最近は「働き方改革」と盛んに言っている。まつりさんのような悲劇が2度と起こさないためには、志位委員長が迫った残業は「月45時間」までと法律に明記することが、「働き方改革」の試金石になるだろう。
過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2016/12/27 20:49

◎ブラック企業大賞に電通

 NHKが12月23日の午後7時のニュースで、次のように伝えました。

 「労働問題に取り組む弁護士やNPOなどが選ぶ『ブラック企業』大賞に、ことしは新入社員だった女性が過労のため自殺した大手広告会社の電通が選ばれました」

 NHKが今年で5回目になる「ブラック企業」大賞について報道するのは、これまで聞いたことがありません。電通の過労自殺問題は、最初から積極的だったNHK。いい報道には拍手です。

 大賞は、「弁護士やNPO、ジャーナリストなど11人の委員が違法な長時間労働やパワハラなどで問題となった企業の中から選んでいます」(NHK)というものです。授賞理由について、次のようにのべています。
http://blackcorpaward.blogspot.jp/

……
 電通で働いていた24歳の新入社員・高橋まつりさんは2015年12月25日に自殺した。時間外労働が月105時間という超長時間労働に加えて、上司からのパワハラによって精神的に追い込まれた結果だった。

 彼女のツイッターには、「はたらきたくない。1日2時間の睡眠時間はレベルが高すぎる」といったものがあるのとともに、亡くなる数日前には「ブラック企業大賞2015」を報道したツイートをリツイートもしていた

 彼女は、亡くなる直前に母親にメールを送っている。「大好きで、大切な母さん、さようなら、ありがとう、人生も仕事もすべて辛いです。お母さん自分を責めないでね。最高のお母さんだから」。

 電通においては、「殺されても放すな。目的完遂までは…」などという社訓『鬼十則』に象徴される異常な精神論が蔓延し、パワハラ・セクハラなどが日常化している。13年前にも入社2年目の男性社員の自殺が過労死と認定され、3年前にも30歳の男性社員の病死が過労死と認定されている。

 電通は、このような過酷で人権侵害的な労働環境をまともに改善することもなく放置し続けた。何人もの労働者がこの企業によって殺された。

 電通は、日本を代表する大企業である。それは輝かしい意味でではない。社会的に決して許されない人権侵害を続けた代表的企業である。ここに、強い怒りを込めて「ブラック企業大賞2016」の大賞を授与する。
……

電通 夜10時前
(東京・汐留の電通本社では、午後10時の全館いっせい消灯の前に、労働者があわだだしく帰宅していきます)

 電通の過労自殺問題は、このブログ「トヨタで生きる」でも、くわしく伝えてきました。トヨタ自動車でも、わかっているだけでもこれまでに5人の労働者が過労死認定されています。

 現在も関連会社をふくめ2人の遺族が名古屋地裁に過労死認定を求めています。トヨタ自動車労組は、「過労死ゼロ宣言」をしており、上部団体の連合は、「残業代ゼロより過労死ゼロ」をスローガンに、労働者を過労死に追い込む、「残業代ゼロ法案」に反対しています。

 過労死ゼロをめざし、少なくとも残業の上限は「月45時間」とする厚労大臣告示を法制化するために、ともに手をたずさえて運動しましょう。
過労死 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2016/12/24 06:36

◎電通の「鬼十則」 社員手帳からはずす

 広告最大手の電通が社員手帳に掲載していた「鬼十則」を来年2017年の手帳から掲載しないといいます。同社新入社員で過労自殺した高橋まつりさん(24)の母親が問題にしていたものです。

 「鬼十則」とは、「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…。」「周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる」など10項目にからなるものです。

 これは、電通の4代目社長で、「広告の鬼」と呼ばれた故吉田秀雄氏が1951年に書いたという10カ条の遺訓のことをいいます。高橋さんの母親、幸美さんはシンポジウム(11月9日)で、「命より大切な仕事はありません」と訴えていました。

高橋まつりさんの母の訴え NHK
(電通の「鬼十則」を問題にした高橋まつりさんの母親の幸美さん=NHK、11月17日放送から)

 こんな「鬼十則」は、民主主義社会では相容れない異常なものであり、上司が「周囲を引きずり回せ」などと言っていたらパワハラそのものです。大企業が、こんなものを麗々しく手帳に掲載していたこと自体が許されないでしょう。

 電通では、まつりさんをはじめすでに3人の過労死が確認されています。その命が失われてやっとこうした異常な「鬼十則」の掲載をやめるという企業体質の遅れに驚くばかりです。

 まつりさんの過労死認定にかかわった川人博弁護士は11月22日、神戸市での講演で、電通の企業体質について、「目標達成が第一という企業風土が問題の背景にある」と指摘。「鬼十則」について、「過度の精神主義」と批判しました(日経新聞、11月23日付)

 企業は、電通に限らず、社訓と称して前近代的なものをかかげているところがあります。トヨタ自動車では、豊田佐吉の考え方をまとめた5項目から成る「豊田綱領」があり、「トヨタ自動車75年史」に書き込まれています。

 このなかに「上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を拳ぐべし」とあります。「産業報国」とは、戦前、日本が侵略戦争に国民を駆り立てていくなかで、労働者を軍事生産、奴隷労働へと動員するための精神的支柱となったものです。

 こうした戦前の考え方は、戦後の民主主義社会とは相いれないものであり、しかもグローバル企業となったトヨタで、見直すべきものではないでしょうか?
過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2016/11/23 10:22

◎電通過労死事件 母の訴え

 遺族らの運動や日本共産党など超党派で制定された過労死防止対策推進法に基づいて厚労省が主催する「過労死防止対策シンポジウム」が11月9日、東京都内をはじめ全国で開かれました。

 東京では今年、長時間労働の末に過労自殺した電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=の母、幸美さんが最愛の娘を失った無念な思いと過労死根絶を訴えました。

 この日は、米大統領選挙でトランプ氏が当選したこともあって、新聞各紙の扱いは小さく、1面で掲載したのは「しんぶん赤旗」だけのようです。同紙を写真で紹介します。

25 電通過労死 母の訴え


 幸美さんの訴え全文は、弁護士ドットコムで見ることができます。
https://www.bengo4.com/c_5/n_5326/

 また、同シンポでは、電通過労死事件を扱った川人博弁護士が、4つの労災事例にみる「過労死問題」について報告。これも弁護士ドットコムで読むことができます。
https://www.bengo4.com/c_5/c_1637/n_5327/
過労死 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2016/11/11 09:07

◎ふたたび「過労社会」の連載 東京新聞

 中日新聞系の東京新聞が、電通での過労自殺事件を扱った「過労社会 電通ショック」の連載(10月29日から)を始めています。2012年7月には、同じタイトルの「過労社会」の連載で、トヨタ自動車のカムリのチーフエンジニアの過労死を扱っています。

 1回目は、電通で徹夜、土日出勤をくり返し、月200時間以上も残業したあげくに体を壊し、休職したものの再発して退職した元社員が登場しています。過労自殺した高橋まつりさんと同じように36協定の上限の70時間までしか残業は付けられなかったといいます。

 1991年に過労自殺した男性社員と同じように、社内の飲み会では、先輩の皮靴に注がれたウイスキーを飲まされたといいます。「殺されても放すな」などモーレツ社員の心得を記した電通の「鬼10則」を暗記させられ、テストまでされたといいます。

 電通は、1991年から高橋さんが過労自殺した15年までの24年間、何も変わっていなかったことを東京新聞に登場した元社員は証言します。これが広告最大手の電通なのです。

60 東京新聞 電通連載


 記事は、リアルに電通の職場を描いています。連載は2人の記者が担当していますが、そのうちの1人、中沢誠記者は、『ルポ 過労社会-8時間労働は岩盤規制か』(ちくま新書)を15年8月に出版しています。

 この本は、ブログ「トヨタで生きる」で、以前にも紹介したことがありますが、安倍政権がねらう「残業代ゼロ制度」法案に鋭く切り込んだ労作です。労働者が過労に追い込まれる実態を克明にルポしています。このなかにトヨタのカムリのチーフエンジニアの過労死の実態を書き込んでいます。

 あとがきで、「勝利至上主義のアベ・ジャパンは、高度経済成長という過去の栄光が忘れられず、『成果』『成果』と国民を追い立てる。ラフプレーが横行する試合を正当化するかのようなルール撤廃で、試合は成り立つのだろうか」と警告しています。

 電通やトヨタなどでのワークルールの厳守とともに、本からは「残業代ゼロ制度」法案を成立させてはならないという強いメッセージを発しています。電通過労自殺事件が起きた今、是非とも読んでみてほしい本です。
過労死 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2016/11/02 05:59

◎電通過労自殺 あぶり出した長時間労働

 広告最大手、電通での過労自殺事件は、長時間労働大国、日本の姿をあぶりだしました。10月30日のNHK日曜討論でも、政党の政策委員長がこの問題をめぐって論議しました。

 日本共産党の小池晃政策委員長・書記局長は、「本当に痛ましい事件」とのべたうえで、残業の上限は大臣告示で月45時間、労働基準法36条の「36協定」(労使で決める)の特別協定で、電通では月70時間になっていたものの、過労自殺した女性は月100時間を超えていたと指摘しました。

 そして、「こともあろうに、厚労省はこの電通を、時間短縮の優良企業として、新“くるみんマーク”というのを認定しているんです」とのべ、2013年に認定した時の厚労大臣は、討論相手の田村憲久政調会長代理だったと指摘しました。

 田村氏は、「反省する」とのべざるをえませんでした。小池氏は、電通事件が2度と起こらないようにするためには、労基法に「残業は年間360時間以内、月45時間以内」と明記すること、「36協定」の特別条項は廃止するべきで、「これは待ったなしでやるべきです」と主張しました。

夜明け
(朝焼け)

 電通では、今回の過労自殺事件の労災認定をふくめ、これまで3件の過労死事件が起きています。トヨタ自動車では、わかっているだけでも5件の過労死認定があり、現在も裁判で争っているのが1件、関連会社で1件あります。

 トヨタの36協定を改めて見てみましょう。1カ月は45時間ですが、絶対限度時間(特別協定)は、電通より長い80時間(年間6回まで)になっています。年間では360時間ですが、絶対限度時間は生産部門で600時間、その他で720時間になっています。

トヨタの36協定


 日本にはフランス(1日2時間まで)などと違って残業の上限を法律で規制していないために、「36協定」で事実上、青天井で残業ができます。たとえば、1カ月で関西電力が193時間、三菱自動車が160時間、ソニーが150時間、東芝が130時間…などとなっています。

 1カ月45時間、年間360時間を法律で規制していたならば、電通やトヨタでの過労死事件は起こらなかったはずです。残業時間の上限を法律で規制することは「待ったなし」です。
過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2016/10/31 12:00

◎トヨタと電通 「1時間ルール」の問題

 相次ぐ過労自殺で問題になっている広告最大手の電通。トヨタ自動車と同じように出退時間をコンピューターで記録するフラッパーゲート(トヨタはカードリーダーといいます)がありました。

 朝日新聞(10月27日付)によると、「入館と始業、終業と退館の間に1時間以上の開きがあった場合、理由を申告し、上司が確認する」という仕組みがあったといいます。

 電通広報部の説明では、「ラッシュを避けるために早めに出社したり、終業後にサークル活動や自己啓発活動をしてから退館したりするなど、私的な理由で残っているケースがある」からだといいます。

電通 本社2
(電通本社=東京都港区汐留)

 これは、トヨタの「1時間ルール」とまったく同じではありませんか。このブログ「トヨタで生きる」で、10月25日アップでこの問題を扱ったばかりです。

 トヨタでは、勤怠入力システムに業務外(「例外」)である旨のコメントを入力し、上司が承認すれば、無制限に社内にいることができること。駅伝のような「HUREAI活動」などインフォーマル活動の「例外」をつくらず「1時間ルール」を厳守する、インフォーマル活動の負荷を軽減することが必要と指摘しました。

 電通では、「夜遅くまで残業したとき、私的な理由で会社に残ったことにして残業時間の申告を減らしているという。終業と退館に1時間以上の差があれば、「『私的情報収集』『(忘れ物などの)一時的入退館』『自己啓発』などの理由をつけて申告する」という」のです(朝日新聞)。

 さらに、「「勤務時間中の一部を働いていなかったことにして『中抜き』することもある」と明かす。例えば、午前1時に仕事が終わって退館した場合、午後8時から午前0時の間は働いていないことにして申告する」というのです。

企業 カードリーダー
(フラッパーゲート=電通やトヨタのではありません)

 過労自殺した入社1年目の高橋まつりさんは、残業時間を労使協定で決めた月70時間以内に抑えるよう上司から指導されていました。昨年10月は69・9時間、同11月は69・5時間にしていましたが、実際には、10月が130時間、11月が99時間でした。厚労省が過労死ラインとしている月80時間を大幅に上回り、「もう(午前4時)だ。体が震えるよう…しぬ もう無理そう。つかれた」といって自殺したのです。

 これでは、いくらコンピューターで客観的に出退勤の記録をしていても、サービス残業がいくらでもできることになります。トヨタとまったく同じではないでしょうか。

 「トヨタで生きる」で指摘したように、業務量が多すぎる、人が少ないなど根本的な問題の解決とともに、インフォーマル活動の「例外」をつくらず「1時間ルール」を厳守すること、インフォーマル活動の負荷を軽減することなどが必要ではないでしょうか。

過労死 | コメント(1) | トラックバック(0) | 2016/10/28 09:43

◎厚労省、電通へ立ち入り調査 残業「月45時間」の法的規制を

 広告最大手の電通で、入社1年目の女性社員が過労自殺した問題で、厚生労働省は電通本社、支社に立ち入り調査(臨検監督、10月14日)をしたのをはじめ、主な主要子会社5社も立ち入り調査しています。

 電通では、1991年にも入社2年目の男性社員(当時24歳)が過労自殺しています。遺族の訴えに最高裁は00年3月、電通の安全配慮義務違反と認めました。電通は、遺族と和解し、再発防止を約束していました。

 電通は、CSR(企業の社会的責任)の「健康管理体制」で、「社員が心身ともに健康で過ごすことができるよう、予防対策から復帰まで、きめ細かい健康管理対応を心掛けています」としていました。

 ところが過労自殺した高橋まつりさんは、残業時間を労使協定で決めた月70時間以内に抑えるよう上司から指導されていたといいます。昨年10月は69・9時間、同11月は69・5時間にしていたといいます。

 実際は、弁護士らの調査で10月が130時間、11月が99時間でした。企業犯罪であるサービス残業を強要されていたのです。厚労省が過労死ラインとしている月80時間を大幅に上回っていました。

50 毎日 電通過労自殺 労働時間 
(毎日新聞から)

 トヨタ自動車は、2003年にカードリーダーを導入。出勤時間、退社時間をコンピューターに記録し、サービス残業ができなくなるシステムを取り入れました。大企業では、セキュリティーと合わせてこうしたシステムを導入しています。電通では、どうなっていたのか? 根本的な疑問がわきます。

 電通は臨検監督を受け、残業時間の上限を月65時間とする(ヤフーニュース)としていますが、たった5時間の引き下げです。

 日本共産党の志位和夫委員長は、2015年2月20日の衆院予算委員会の基本的質疑で、残業の限度は「月45時間」とする厚生労働大臣告示を法制化するよう安倍首相にせまりました。

 トヨタの2つの過労死事件を取り上げ、厚労省の通達では、「月45時間」を超えると、健康障害のリスクが徐々に高まると強調し、「月45時間」までとするよう求めたものです。

 しかし安倍首相は、「慎重に検討すべき課題」とのべるにとどまりました。安倍政権のこうした野放しの状態が電通での悲惨な過労自殺を引き起こしたのです。残業時間の法的規制は、待ったなしです。
過労死 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2016/10/19 08:35

◎厚労省、初の「過労死白書」

 厚生労働省は10月7日、超党派で成立した過労死防止法(過労死等防止対策推進法)を受けて、初めて「過労死白書」を発表しました。白書は、カラー刷り、280ページで、ネットでも読むことができます。
 http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/16/dl/16-1.pdf

 過労死は、「karoushi」と表記されるほどで、日本にしかないといわれてきました。「白書」では、1988年に弁護士らによって過労死110番が設けられるなど、1980年代後半から社会問題になってきたことにふれています。

 しかし、実際の運動は、全国に先がけて大阪で81年に「大阪急性死等労災認定連絡会」が結成されました。当時は、まだ突然死、急性死、在職死などが一般的でした。細川汀・元京都府立大学教授らが1982年に『過労死』というタイトルの本を出版しました。

 細川氏は、「過労によって生体のリズムが崩壊し、生命を維持する機能に致命的破綻をきたした状態」と考え、名付けたといいます。これによって、実態を表した過労死の言葉が定着・普及していきました。

 当時の過労死の認定件数は、厚労省の認定基準が極めて狭いものだったために、21件(87年度)、33件(90年度)にすぎませんでした。91年11月に「全国過労死を考える家族の会」が結成されるなどして運動が広がりました。「白書」で明らかにしているように、過労死の認定は96件(15年度)、過労自殺の認定(同)は93件までになりました。

70 過労死認定者の残業時間
(「過労死白書」では、過労死=脳・心臓疾患=の残業時間別認定件数を掲載しています)

 しかし、過労死の認定は請求件数283件のうちの96件、過労自殺の認定は請求数199件のうちの93件で、3分の1から半分にとどまっています。現在、トヨタとその関連会社で、裁判で争われている2件は、いずれも厚労省が却下したものです。

 過労死の立証が遺族側に負わされているなど、遺族の運動は厳しく、認定をもっと増やすためには、支援者らのいっそうの運動と厚労省の認定基準の緩和が必要です。

 「白書」では、年平均労働時間の国際比較の表が掲載されています。ドイツ、フランスは1300時間台、日本は1700時間台です。日本は、労働時間が短いパートタイムも入っています。正社員に限れば2000時間前後で、トヨタ自動車では1900時間台です。

年間総労働時間の各国比較
(「過労死白書」では、年平均労働時間の各国別推移を掲載しています)

 しかも日本では、1カ月の残業が最も長かった正社員の残業時間は、厚労省が「過労死ライン」と呼ぶ月80時間を超えた企業が、22・7%にのぼっています。日本の長時間労働と“過労死予備軍”が広がっている実態は、国際的に見ても異常です。

 「過労死ライン」の月80時間の残業とは、週の労働時間に換算すると約60時間です。1日8時間の労働に4時間の残業をすると、週5日で60時間になるからです。朝9時から働いて夜の10時ごろまで、毎日残業することになります。こんな働き方ではアウトです。

 「白書」では、アンケート(複数回答)も掲載されています。残業をするのは、「業務量が多いために」(経営者の回答で43・3%)、「人員が足りないため」(労働者の回答で32・2%)などとなっています。

 「労働生産性が低いため」(経営者の回答で4・4%)ということはあてはまらず、人を増やすことで残業を少なくし、過労死をなくす――このことが最も効果があることが明らかです。
過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2016/10/10 15:08

◎“ブラック企業”・電通 過労自殺者2人目

 広告最大手の電通で、またもや過労自殺が起きました。東京大学を卒業後、入社1年足らずでの過労自殺です。新聞各紙の報道を読んで、やり切れさが残りました。

 過労自殺したのは、高橋まつりさん。昨年12月25日に寮から飛び降りて自殺しました。24歳でした。毎日新聞は、亡くなる2カ月余りの高橋さんのツイッターなどのSNSを表にしています。

高橋まつりさん 毎日新聞年表
(高橋まつりさんのSNSから=毎日新聞、10月8日付から)

 「(上司から)資料をボロくそに言われた。もう体も心もズタズタだ」「生きているために働いているのか、働くために生きているのか分からなくなってからが人生」「土日も出勤しなければならない…本気で死んでしまいたい」

 「毎日次の日が来るのが怖くてねられない」「失踪したくない?」「1日の睡眠時間2時間はレベルが高すぎる」「死ぬ前に送る遺書メールのCCに誰を入れるのがベストな布陣を考えていた」

 事実、亡くなる2カ月前の10月が130時間、11月が99時間も残業がありました。厚労省は、月80時間を過労死ラインとしています。

 いったい、これほど高橋さんを追い詰めた仕事とは何なのか? 高橋さんの母、幸美さん(53)は、「命より大切な仕事はありません」と語っているといいます。

 電通では、1999年に入社2年目の社員(当時24)が自殺しています。00年3月、最高裁は、企業に安全配慮義務があると認定しました。電通は、遺族と和解し、再発防止を約束しました。

 電通はCSR(企業の社会的責任)の「健康管理体制」で、「社員が心身ともに健康で過ごすことができるよう、予防対策から復帰まで、きめ細かい健康管理対応を心掛けています」としています。

 またもや信じられないような過労自殺が起きて、空々しく聞こえます。“ブラック企業”・電通といわれてもしかたがないでしょう。

電通 本社
(東京都港区汐留の電通本社)

 全国で過労死と認定されたのは、2015年度までの6年間で、113、121、123、133,121、96件と依然として100件前後で高止まりしています。過労自殺で認定されたのも、65、66、93、63、99、93件を数えます。

 トヨタ自動車では、これまでわかっているだけで5件の過労死認定があります。現在も、2人の過労死事件が裁判で争われています。

 1件は、トヨタ本社所属で、三好工場で働いていた労働者の過労自殺事件です。過重な設計の仕事と上司のパワハラで10年1月自殺。昨年7月に名古屋地裁に提訴しています。

 もう1件は、トヨタテクノクラフトの関連会社、テー・エス・シーで、プリウスの試作現場へ応援に行くなどして働いていた労働者の過労死です。今年3月、名古屋地裁が労災と認めず、高裁へ提訴しています。

 トヨタ労組が加わる労組の全国組織、連合は「残業代ゼロ」法案に反対し、「残業代ゼロより過労死ゼロ」と運動しています。トヨタ労組は、「“過労死ゼロ”宣言」をしています。

 過労死ゼロ、過労自殺ゼロへ力を合わせようではありませんか。
過労死 | コメント(10) | トラックバック(0) | 2016/10/09 17:10

◎“過労死ライン”80時間超 半数の企業で

 厚労省が5月16日発表した調査では、1カ月間の残業が最も長かった正社員の残業時間が、“過労死ライン”(厚労省)の80時間を超えた企業は、22・7%にのぼることが明らかになりました。このうち1000人以上が働く企業では5割を超えています。

 過労死と認定されたのは、2014年度までの5年間で、113、121、123、133,121件と120件前後で高止まりしています。過労自殺で認定されたのも、65、66、93、63、99件を数えます。

 世界にも例のない過労死大国・日本で、依然として長時間労働は深刻です。

30 厚労省 月45時間超 リスク
(厚労省の「過重労働による健康障害を防ぐために」から)

 この調査は、日本共産党などすべての党の賛成で成立した過労死等防止対策推進法にもとづき、昨年12月から今年1月にかけて1万154社を調査、うち1743社が回答しました。

 80時間超えは、22・7%でしたが、うち100時間超は11・9%も占めました。厚労省や裁判所は、労働者が亡くなる1カ月前にしていた残業について、「おおむね100時間」を過労死認定にしています。こんな働かせ方が、まかり通っているとは驚きです。

 残業の上限規制については、昨年2月20日の衆院予算委員会基本的質疑で、日本共産党の志位和夫委員長が、「月45時間」とする厚生労働大臣告示を法制化するよう安倍首相に迫りました。

 その際、トヨタ堤工場の内野健一さんの過労死、カムリのチーフエンジニアの過労死の2つの実態をくわしく取り上げました。さらにトヨタの「36協定」では、「月80時間」までの残業が可能となっていることを指摘しました。

 志位委員長は、厚労省の通達では、「月45時間」を超えると、健康障害のリスクが徐々に高まると強調。法律で残業は「月45時間」までとするよう求めたものです。

 今回の厚労省調査で、「月45時間」の法制化がまったなしであることが明瞭になりました。
過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2016/05/19 10:39

◎長時間労働規制 安倍政権が動き始めたが…

 安倍政権が、日本の長時間労働の法的規制について、「36協定における時間外労働規制の在り方を再検討する」(安倍首相、3月25日)などと、やっと重い腰を上げ始めました。

 このブログ「トヨタで生きる」では、4月1日アップで、日本共産党の志位和夫委員長が昨年2月の衆院予算委員会基本的質疑で、ヨーロッパ諸国より異常に長い日本の長時間労働問題を取り上げ、このなかで、36協定まかせではなく、残業時間は「月45時間」までと法律で規制するよう求めたことを紹介しました。

 同じ4月1日、塩崎恭久厚生労働相は、1カ月の残業が100時間に達した場合に行っている労働基準監督署の立ち入り調査について「80時間を超える残業のある事業所に対象を広げる」と表明(日経新聞、4月2日付)しました。

 このことは、一歩前進ですが、これまでの月100時間というという残業時間は、どんな時間なのでしょうか? 厚労省や裁判所は、労働者が亡くなる1カ月前に「おおむね100時間」の残業をしていたというのを、過労死認定の目安にしている時間です。

トヨタ総行動 過労死なくせ
(「長時間労働・過労死なくせ!」を掲げたトヨタ総行動=2月11日)

 トヨタ自動車堤工場で働いていた内野健一さんが、名古屋地裁で過労死認定(2007年11月)されたのも、QCサークル活動や創意くふう運動もふくめて月の残業時間が106時間45分だったからです。

 一方、トヨタテクノクラフト(本社・東京、トヨタが100%出資の子会社)の関連会社、テー・エス・シー(同社の100%出資の子会社)で働いていた三輪敏博さんの過労死については、妻の香織さんの訴えを名古屋地裁は認めませんでした(先月16日)。

 厚労省側は、三輪さんの残業時間を85時間と算出。香織さんは、サービス残業を含めて99時間と主張してきましたが、裁判所は過労死と認めなかったために香織さんは名古屋高裁に控訴しました。

 このブログで4月1日にアップした記事は、厚労省の資料をもとに健康障害のリスクは、「月45時間以内」は低いものの、これを超えると徐々に高まること。「月100時間超、または2~6カ月平均で月80時間を超えると」、リスクは高くなることを紹介しています。

 厚労省が立ち入り調査をする場合を80時間超としたのは、一歩前進とはいえ、極めて不十分なものです。日本共産党の志位和夫委員長が提起したように、残業は「月45時間」までとする法的規制の一刻も早い実現とともに、立ち入り調査も月45時間超とすべきでしょう。

 「月45時間」の法的規制があったならば、内野さんも三輪さんも亡くなることはなかったでしょう。世界に類例がないといわれる“過労死”を根絶するために。
過労死 | コメント(3) | トラックバック(0) | 2016/04/06 10:46

◎過労死と認めず トヨタ関連・三輪裁判

 夫の過労死を認めてほしい、とトヨタ自動車の関連会社で働く三輪敏博さん(死亡当時37歳)の妻が、厚労省労働基準監督署が労災と認めなかったことの取り消しを求めて名古屋地裁に訴えていた裁判で、同地裁は3月16日、これを認めない不当判決を出した。

 訴えていたのは三輪香織さん(39)。夫の敏博さんは、トヨタテクノクラフト(本社・東京、トヨタが100%出資の子会社)の関連会社、テー・エス・シー(同社の100%出資の子会社)のチームリーダーだった。

 敏博さんは、トヨタテクノクラフトの愛知工場(東海市)で働いていた。おもな仕事は、トヨタの救急車の防振ベッドの組立・架装だったが、連日、プリウスの試作現場へ応援に行くなど多忙をきわめていた。

 亡くなった2011年は、東日本大震災のばん回生産で、節電を理由にトヨタと関連会社は7~9月まで木金休み、土日出勤という変則勤務を実施した。敏博さんの生活リズムは大きく崩れ、うつ病も発症し、同年9月27日、自宅で虚血性心疾患で亡くなった。

三輪裁判1


 国の過労死認定基準は、亡くなる1カ月前の残業は「おおむね100時間」だが、厚労省側は85時間と算出。三輪さんは、サービス残業を含めて99時間と主張してきた。

 しかし、名古屋地裁の田中浩典裁判長は、厚労省側の算出を認め、「過重な労働とはいえない」とのべ、三輪さんの訴えを退けた。傍聴席に入れないほどの約50人の支援者からは怒りの声が出た。

三輪裁判2
(判決後、「このままでは終われない」と語る三輪香織さん)

 判決が出た後、弁護士会館で記者会見と報告集会が開かれた。三輪さんは、「このままでは終われない」とのべ、控訴することを検討する方向だ。夫がトヨタ堤工場で過労死して、同じ名古屋地裁で労災として認めさせた内野博子さんら支援者が不当判決への怒りをのべた。

 テー・エス・シーから三輪さんの証人が出ないなかでのたたかいだった。支援の声をもっとあげていく必要があると思った。
過労死 | コメント(3) | トラックバック(0) | 2016/03/19 11:48

◎2人の女性が過労死認定の支援訴え トヨタ総行動

 2016年の「トヨタ総行動」が行われた2月11日、トヨタと関連の職場で働き、過労死した夫の労災を認めて欲しいと2人の女性が訴えました。トヨタの職場では、いぜんとして過労死はなくなっていません。

 これは、豊田市内の山ノ手公園で開かれた集会での訴えです。1人は、三輪香織さん(38)です。夫の敏博さん(死亡当時37歳)は、トヨタテクノクラフト(本社・東京、トヨタが100%出資の子会社)の関連会社、テー・エス・シー(同社の100%出資の子会社)のチームリーダーでした。

 敏博さんは、トヨタテクノクラフトの愛知工場(東海市)で働いていました。おもな仕事は、トヨタの救急車の防振ベッドの組立・架装でしたが、連日、プリウスの試作現場へ応援に行くなど多忙をきわめていました。

 亡くなった2011年は、東日本大震災のばん回生産で、節電を理由にトヨタと関連会社は7~9月まで木金休み、土日出勤という変則勤務を実施していました。

 敏博さんの生活リズムは大きく崩れ、同年9月27日、虚血性心疾患で亡くなりました。香織さんは、参加者に訴えました。

 「夫は、土日出勤、木金休みで力つき、37歳の若さでなくなりました。やさしくまじめな夫でした。亡くなる1カ月前は、サービス残業をふくめて残業は100時間を超えていました。うつ病も発症していました。命を削って働いていたのです。名古屋地裁で3月16日に判決が出ます。みなさんの支援をお願いします」

三輪香織さんと内野博子さん
(訴える三輪香織さん。右は内野博子さん=2月11日、豊田市の山ノ手公園)

 もう1人の訴えは、匿名で名古屋地裁に訴えている妻のOさんの支援をしている内野博子さんです。博子さんはトヨタ堤工場で働いていた夫の過労死認定を、2007年に名古屋地裁で認めさせました。

 Oさんの夫(当時40歳)は、トヨタ本社所属で、三好工場で働いていましたが、過重な設計の仕事と上司のパワハラで2010年1月に自殺に追い込まれました。豊田労基署が労災と認めなかったために、昨年7月に名古屋地裁に提訴しました。

 内野さんは、「Oさんは体調不良です。3回目の口頭弁論が3月23日にあります。みなさんの傍聴をお願いします」と訴えました。

 トヨタ労組が加盟する労組の全国組織・連合は、「残業代ゼロより過労死ゼロ」のスローガンをかかげています。トヨタ労組は、「過労死ゼロ宣言」をしています。労組が、三輪さんやOさんの支援ができるように力を尽しましょう。
過労死 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2016/02/13 14:43

◎三輪敏博さんの労災裁判 3月16日判決 (下)

 【提訴】
 2014年4月、過労死裁判を多数手掛けてきた弁護士を弁護人にたてて、遺族は「労災補償不支給の取り消し」を求めて名古屋地裁に提訴しました。以後、9回の口頭弁論があり、2015年9月9日に証人尋問があって、12月16日に結審しました。

 【裁判の争点と社会的意義】
 この裁判の争点は時間外労働が100時間程度と認められるのか否かであり、その点では複雑な争点はありません。しかし、時間外の休憩時間が本当にとれていたのか、打刻の時間外にも労働実態があったのではないか、など職場実態を裁判長が口頭弁論の進行のなかから、いかに判断するかが重要です。

 弁護人は結審での発言で、前回の法廷終了後も証人等に接触して労働実態を聞きだしたところでは、法廷の証言とは違うところもあるとしています。

 労災補償とは言いますが、労災賠償とは言いません。労災は不当な行為によって生じたものではないという前提があるからだと思います。だから、労災が起こっても必ずしも企業の過失責任が問われるものではないとも思います。なら、もう少し労災認定を積極的に行ったらいいのではないでしょうか。

 厚労省の認定基準に当てはまるから労災だ、そうでないから不認定だということなく、裁判所が労災と認めれば厚労省が新しい認定基準を決めるのだから、労災認定訴訟を損害賠償裁判ととらえず、労働者が人間らしい生活を守るための判決を期待しているとも弁護人は述べています。

三輪さん
(トヨタ総行動で訴える三輪香織さん=2015年2月11日)

 【過労死根絶を目指して】
 西三河では過労死や過労自死の裁判が目立つ異常な状態があります。昨年11月には過労死等防止対策推進法が発効しました。国、公共団体や企業に過労死防止対策を呼びかけるもので、過労死家族の会などが国会議員に働きかけて超党派で成立した法です。

 遺族の思いが法成立の原動力になったものです。今後、実効あるものとするにはいくたの乗り越えるべき問題点があることでしょう。広く国民に存在と理解を広める必要があります。

 【判決は2016年3月】
 判決は2016年3月16日(水)午後1時10分からと予定されています。勝訴を確信していますが、被告側がメンツのための控訴をしないことを切に願っています。

2015年12月23日
 三輪敏博さんの過労死認定を支援する会
事務局長 森下浩平
過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2015/12/26 08:27

◎三輪敏博さんの労災裁判 3月16日判決 (上)

 トヨタ自動車の関連会社、テー・エス・シーで働いてきた三輪敏博さん(死亡当時37歳)が過労死で亡くなって4年余り。2人の子どもをかかえた妻の香織さんの労災認定を求める裁判が12月16日、結審しました。来年3月16日に名古屋地裁で判決が出ます。

 「三輪敏博さんの過労死認定を支援する会」の森下浩平事務局長に、三輪さんがなぜ過労死にいたったか、労基署や裁判所でのたたかいについて寄稿していただきました。

……
三輪敏博さんの労災認定を求める裁判が結審しました。

【三輪敏博さんのしごと】
 トヨタテクノクラフトはトヨタ自動車が100%出資の企業です。本社は神奈川県にあり、愛知工場は2006年8月に開設され、首都圏以外では初めての工場です。救急車をはじめ官公庁や海外向け特装車の組み立て、それに試作車開発を中心とした事業をおこないます。

 三輪敏博さんはトヨタテクノクラフトの敷地内に置かれる主要子会社であるテー・エス・シーに勤めていました。テー・エス・シーでの主な仕事は救急車の防振ベッドの架装でした。救急車は患者を搬送するのですから、患者に振動が伝わりにくいことが要求されます。そのために使用されるのが防振ベッドです。

 【2011年敏博さんに降りかかった出来事】
 2011年、敏博さんにいくつもの予想もしなかった出来事が降りかかってきます。ひとつはチーフへの昇進を打診されたことです。まじめな働きぶりと気遣いある周囲への対応が評価されたのでしょう。一般には昇進は喜ぶべきものでしょうが、本人にとっては責任の重さと負担の増加があり、うれしいというだけではすまないこともあります。

 もうひとつはテー・エス・シーでの本務に加えてトヨタテクノクラフトの作業への応援業務がありました。トヨタが新車種を発売するということでトヨタテクノクラフトは6月ごろから多忙になったことが応援の理由です。応援作業のあとから事務処理をおこなう必要もあったでしょう、長時間労働の原因となりました。

 それから、土日の休日が木金に変更されたことも敏博さんに心理的な負担を強いることになりました。この年3月11日の東北大震災以降、夏場の電力不足が懸念されたための措置でした。小学生と園児、ふたりの子どもさんと一緒にいることが仕事の疲れをいやす楽しみであった敏博さんには、土日出勤はその機会を大幅に減らすことになりました。

三輪さん 結審
(名古屋地裁での裁判が結審して、あいさつする三輪香織さん=12月16日)

 【うつと長時間労働そして死】
 そうなる前から、うつ状態で治療を受けていた敏博さんでしたが、それ以後、症状は悪化していきます。就寝しても寝付きが悪く、浅いねむりがつづく様子でした。そして、朝は寝覚めよく起きらず、亡くなる前日は仕事に出かけるのもつらそうだったと家族はいっています。

 2011年9月27日、自宅で倒れているところを家族が見つけられましたが、虚血性心疾患(致死性の不整脈)助かりませんでした。過労が前触れもなく人の命を奪うことは大いにありうることだといわれています。

 【過労死不認定】
 遺族はタイムカードや仕事の内容を調べていくうちに、1か月の時間外労働が100時間を超えることを知り過労死を確信して、テー・エス・シーを管内に持つ半田労働基準局に過労死認定申請をしました。

 結果は意外なものであり、改めて愛知労働局に申請したものの2013年3月審査請求を却下され、労働保険審査会も2013年12月に棄却の決定をしました。

 厚労省による労災認定の基準は、亡くなる1か月間に100時間程度の時間外労働が認められるか、亡くなる6か月前から2カ月前までの1か月あたりの平均時間外労働が80時間程度あることとしています。

 敏博さんの場合、大震災以後の数か月間は仕事があまりなかったので基準には達していませんでした。また、労働基準監督署などが亡くなる1か月前の時間外労働を85時間程度と判断しました。

 遺族が100時間を超えるとしたのになぜこのような差が出たのか。それは、休憩時間の設定があり、その間は仕事をしていなかったと判断したためです。どの程度、個別の経過を調査したのかわかりませんが、結論は厚労省の基準が決め手となったようです。
過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2015/12/25 12:11

◎厚労省主催で過労死シンポ トヨタ関連の妻が訴え

 厚生労働省が主催して11月23日、名古屋市中村区の名古屋国際センターで、「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開かれました。トヨタ自動車の関連会社で働き、過労死した夫について訴えた三輪香織さん(38)やトヨタ堤工場で過労死した夫の労災認定を裁判で勝ち取った内野博子さんらが訴え、報告しました。

 シンポは、NHKや中日新聞などがいっせいに報道。三輪さんの訴えが大きく取り上げられました。こうしたシンポが、厚労省主催で、愛知県で初めて開かれたことに、過労死にかかわってきた遺族や弁護士、医師ら関係者は感慨深く思っています。

 内野さんの過労死も、厚労省豊田労働基準監督署は認めず、博子さんが名古屋地裁に訴えて認められるなど、厚労省は過労死の労災認定や過労死をなくすることに消極的だったからです。

 この厚労省の姿勢を大きく転換させたのが、昨年6月に成立した過労死防止法でした。日本共産党をはじめ自民党、民主党など全政党・会派で成立したのです。

過労死等防止対策推進シンポジウム[1]


 3人の学者・医師が『過労死』(労働経済社)というタイトルの本を出版したのが1982年2月でした。それまで、突然死、急性死、在職死などといわれてきたのが、働きすぎによる死であるという本質の言葉として命名されたのです。日本特有の現象として「カロウシ」という国際語にもなりました。それから32年。国がやっと本格的に過労死の防止に乗り出そうとしています。

 過労死は、2014年度までの5年間で、請求件数は242~302件を数え、うち認定されたのは113、121、123、133,121件と120件前後で高止まりしています。

 過労自殺も、14年度までの5年間で、請求件数は169~213件を数え、うち認定されたのは65、66、93、63、99件を数えます。過労死も過労自殺も減る傾向はありません。

 シンポジウムで訴えた三輪香織さんの夫の敏博さん(死亡当時37歳)は、トヨタテクノクラフト(本社・東京、トヨタが100%出資の子会社)の関連会社、テー・エス・シー(同社の100%出資の子会社)のチームリーダーでした。

中日新聞 三輪香織さん
(三輪香織さんらの訴えを伝える中日新聞、11月24日付)

 敏博さんは、トヨタテクノクラフトの愛知工場(東海市)で働いていました。おもな仕事は、トヨタの救急車の防振ベッドの組立・仮装でしたが、連日、プリウスの試作現場へ応援に行くなど多忙をきわめていました。

 亡くなった2011年は、東日本大震災のばん回生産中で、節電を理由にトヨタと関連会社は、7~9月まで木金休み、土日出勤という変則勤務を実施。敏博さんの生活リズムは大きく崩れ、同年9月27日、自宅で虚血性心疾患で亡くなりました。

 香織さんはシンポジウムで、「夫は仕事に命を奪われました」とのべ、家族が苦しむ過労死をなくしてほしいと訴えました。香織さんは現在、裁判闘争中です。今年2月11日のトヨタ総行動でも訴えました。

 シンポジウムでは、「連合愛知の職員が、去年1年間で、寄せられた相談は948件で、前の年に比べて100件あまり増えたことを明らかにしました。相談の内容は、長時間労働や残業代の不払いについての相談のほか、睡眠時間を削って働く若い世代を心配する親からの相談も増えていると説明しました」(NHK)と連合愛知からも報告がありました。

 連合愛知(52万人)には、全トヨタ労連やトヨタ労組が加盟する自動車総連が加わっています。三輪さんは、トヨタの関連会社で働いていました。トヨタ労組は、「過労死ゼロ宣言」をしています。連合愛知をはじめ労組は、香織さんが裁判で労災認定されるよう支援をしてほしいと思います。


過労死 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2015/11/24 11:25

◎過密・過重な仕事とパワハラ 妻が労災求め提訴

 トヨタ自動車の社員の夫が自殺に追い込まれたのは、過密・過重な仕事とパワハラが原因だとして、妻が労災認定を求めて7月10日、名古屋地裁に訴えました。

 トヨタではこれまで、わかっているだけでも過労死で5件の労災認定がされています。このなかには、堤工場で過労死(2002年)した内野健一さんの妻の博子さんの訴えを、名古屋地裁(2007年)が認めた事例もあります。

 現在も、トヨタの関連会社で働いていて過労死(2011年)した三輪敏博さん(死亡当時37歳)の労災認定を求めて、妻の香織さんが14年4月に名古屋地裁に訴えています。

 三輪さんは、トヨタテクノクラフト(本社・東京、トヨタが100%出資の子会社)の関連会社、テー・エス・シー(同社の100%出資の子会社)のチームリーダーでした。

 今回の提訴も、労災認定されるよう支援したいと思います。提訴は、メディアがこぞって伝えています。このうち中日新聞と共同通信、しんぶん赤旗の記事を紹介します。

50 トヨタ パワハラ過労死
(「しんぶん赤旗」、7月11日付)

★自殺はパワハラなどが原因 社員の妻がトヨタ提訴(中日新聞)

 トヨタ自動車社員だった男性=当時(40)、愛知県豊田市=が在職中に自殺したのは、過重労働やパワハラによるうつ病が原因だったとして、男性の妻(44)が10日、国を相手に、労災を認めず遺族補償年金などの不支給を決定した豊田労働基準監督署の処分取り消しを求める訴訟を、名古屋地裁に起こした。

 訴状によると、男性は乗用車の駆動系統の製品を生産するための準備業務に主任として従事。2009年秋ごろから「仕事が気になって眠れない」と訴えたり食欲が低下したりし、12月にうつ病の診断を受けた。10年1月、「出勤する」と出掛けたまま連絡が途絶え、2日後に遺体と遺書が見つかった。

 男性がうつ病を発症したのは、国際的な金融危機を背景とした業績の低下で「トヨタショック」と呼ばれていた時期。収益改善のため、男性の部署では人員が大幅に削減され、残業も禁止されたという。

 原告の代理人弁護士は「男性に仕事が集中していたが、残業禁止で効率が上がらず負担が膨らむ形になった」と主張。また、上司から大声で怒鳴られるなどのパワハラを受け、心労が重なったという。

 遺族は11年6月に豊田労基署に労災申請したが認められなかった。処分を不服として愛知労働者災害補償保険審査官や国の労働保険審査会に審査請求したが、いずれも棄却されたため、提訴した。

 名古屋市内で記者会見した妻は「夫がどんな仕事をしていたのか、会社から十分な説明はなかった。子どもに『お父さんは一生懸命働いていた』と胸を張って言えるためにも、裁判で本当のことを知りたい」と述べた。

 豊田労基署を所管する愛知労働局労災補償課は「訴状が届いておらずコメントは控える」、トヨタ自動車は「訴訟の詳細を把握する立場にないので、コメントできない」としている。

★「パワハラで自殺は労災」 トヨタ社員遺族が国提訴(共同通信)

トヨタ自動車の男性社員=当時(40)=が2010年に自殺したのは過重な業務と上司のパワーハラスメントが原因として、男性の妻(44)が10日、労災を認めなかった豊田労働基準監督署(愛知県豊田市)の処分取り消しを国に求める訴訟を名古屋地裁に起こした。

 訴状によると、男性は1990年にトヨタに入社し、車体生産ラインの設計などに従事。08年のリーマン・ショック以降、パワハラを受けるようになった。09年9月から担当を変わったが、パワハラは続き、うつ病を発症。10年1月に豊田市内の林で首つり自殺した。

 トヨタ自動車は「訴訟の詳細を把握する立場にない」としている。

               ◇

 この記事は、7月12日にアップする予定でしたが、都合により前日にアップしました。
過労死 | コメント(4) | トラックバック(0) | 2015/07/11 15:59

◎裁量労働制で過労死認定

 トヨタ自動車で、裁量労働制で働いている1500人のみなさん。無理して働いていませんか? 東京で、裁量労働制で働いていた男性労働者が今年3月、過労死認定されました。亡くなる半年前は、みなし残業時間は40時間だったのに、実際は毎月100時間を超える残業をしていたといいます。

 毎日新聞(5月12日付)が報道しているものです。それによると、企業が時間管理をしていない裁量労働制での過労死認定は、きわめてまれだといいます。

 2013年に心疾患で死亡した男性(当時47歳)は、証券や国債などの市場情報を提供するアナリストとして働いていました。実際の勤務時間とは関係なく一定の時間を働いたとみなす裁量労働制の適用者でした。

 遺族は、リポートの発信記録や同僚の証言などをもとに男性の労働実態を調査。午前3時ごろに起床し、日本と昼夜が逆転する海外市場の動向を分析したうえで、午前6時ごろには出社していたといいます。

 顧客向けリポートの発信記録によると、日本の市場が開く前の午前6時40分ごろが最初で、午後5時半までに30を超えていたといいます。高熱でも出勤を命じられ、本人の仕事の裁量は実質的になかったといいます。

 遺族側は、調査の結果、死亡1カ月の残業を133時間、2〜6カ月前の平均残業時間を108時間と分析して労働基準監督署に労災申請し、過労死と認められたものです。

テクニカルセンターの夜
(トヨタの技術者が働くテクニカルセンター)

 トヨタ自動車の裁量労働制の適用者は、14年3月時点で、企画業務型が331人、専門業務型が1248人です。1カ月の超過在社時間が80時間を超えるなどして健康診断を受けた社員は、合わせて242人にのぼります。

 健康診断を受ける労働者がこれだけいることは、深刻です。それなのに安倍政権は、今国会で「残業代ゼロ法案」とともに、裁量労働制の営業職への拡大をねらっています。

労働3団体など ネットから
(東京・日比谷野外音楽堂での労働3団体などの集会=14日夜、ネットから)

 5月15日には、トヨタ労組が加わる労働組合の全国組織、連合や全労連、全労協の3団体が日本労働弁護団などとともに、東京・日比谷野外音楽堂で集会を開き、国会まで約2500人がデモ行進しました。

 「残業代ゼロ法案」や裁量労働制の拡大、労働者派遣法の改悪反対を訴えました。仕事で死ぬなんてごめんです。安倍政権の雇用破壊に反対しましょう!

             ◇

 この記事は、5月16日にアップの予定でしたが、都合により前日にアップしました。
過労死 | コメント(10) | トラックバック(0) | 2015/05/15 16:08

◎「残業代ゼロ」法案をつぶそう メーデーで

 5月1日は、アメリカの労働者が8時間労働制を要求して立ち上がった日(1886年)を記念して、世界の労働者が団結、連帯してたたかうメーデーです。

 安倍政権が連休明けにも8時間労働制を崩す「残業代ゼロ」法案を提出しようとしているだけに、労働組合の全国組織、全労連、連合がともに反対していこうとのアピールを出しました。

 全労連などの中央メーデーは、東京・代々木公園で開かれ、2万8000人が参加。全労連の小田川義和議長が、「労働運動の原点に立ち返った歴史的なたたかいが、いま迫られている」とのべ、「高度プロフェショナル制度」という名で安倍政権が導入しようとしている「残業代ゼロ」法案や労働者派遣法の改悪、集団的自衛権行使の「戦争立法」の反対に全力をあげようと呼びかけました。

 一方、トヨタ労組の上部団体の連合は、4月29日に同じ代々木公園で中央メーデーを開催。約4万人の参加者を前に、古賀伸明会長は「職場から過労死をなくすことが重要な課題なのに、労働者保護ルールの改悪は理解できない」とあいさつ。「残業代ゼロ」法案反対を呼びかけました。

 今年のメーデーでは、「残業代ゼロ」法案は過労死を助長させるとして全国過労死を考える家族の会の代表が連帯あいさつしました。全労連のメーデーでは、過労自殺した小児科医の夫の妻、中原のり子さん(東京代表)が、「過労死を促進するのではないかと心配しています」と訴えました。

愛知メーデー1
(愛労連などが開いたメーデー=名古屋市栄のエンゼル広場)

 名古屋市の栄・エンゼル広場で開かれた愛労連(愛知県労働組合総連合)などのメーデー(約3500人が参加)では、過労死したトヨタ自動車堤工場で働いていた夫の妻、内野博子さんが、全国家族会の寺西笑子さんのあいさつを代読しました。

愛知メーデー2
(愛労連などが開いたメーデー=名古屋市栄のエンゼル広場)

 内野さんは、代読した感想についてネットで、「『残業代ゼロ法案』、絶対ダメです! マジメな日本人。ついついキリなく頑張っちゃうし、頑張らされちゃうから、また過労死が増えちゃう」と発信していました。

愛知メーデー3
(訴える内野博子さん)

 同メーデーでは、日本共産党の本村伸子衆院議員をはじめ、愛知県議選、名古屋市議選で躍進した党議員団が紹介されました。

愛知メーデー5
(紹介された本村伸子衆院議員=右から2人目=ら日本共産党の議員)

 連合は、昨年から「自組織から過労死等を出させない」などを目的にした「“過労死ゼロ”宣言」に取り組んできました。3月末までに、トヨタ自動車労組など9000組織が宣言しています。

愛知メーデー4
(愛労連などが開いたメーデー=名古屋市栄のエンゼル広場)

 メーデーを機に、安倍政権に対し、「残業代ゼロより、過労死ゼロ」の運動を、労組の立場を乗り越えていっそう強めようではありませんか。
過労死 | コメント(3) | トラックバック(0) | 2015/05/02 14:05

◎寺西過労死家族の会代長が月刊『連合』に登場

 トヨタ自動車労組が加盟する労働組合の全国組織、連合の月刊誌『連合』3月号に、過労死を考える家族の会の寺西笑子代表が登場。インタビューに答え、安倍政権が今国会に提出する「残業代ゼロ法案」は、過労死を増やすものとして同法案に強く反対しています。

 同誌よると、和食店で働いていた寺西さんの夫は、1996年に49歳で過労自死しました。大規模店の店長として、達成困難な「成果」を求められてうつ病を発症。亡くなる1年前の年間労働時間は、実に4000時間を超えていました。

寺西さん 連合
(月間『連合』のインタビューに答える寺西笑子さん=『連合』3月号)

 「過労死110番」を知り、99年に労災申請。2年後に労災認定されました。しかし、会社は責任を認めなかったために、民事裁判を起こしました。そこで元社長は、傍聴席の寺西さん親子にこういいました。

 「自分もうつ病になり、思い悩んで自殺を考えたことがあるが、息子に励まされ自殺を思いとどまった。寺西さんは、なぜこういう親子関係が築けなかったのか、残念でならない」

 会社側の責任逃れの定番といわれる「女・カネ・家庭不和」を使ったのです。追加訴訟で元社長を訴え、06年に「過失相殺なし」の全面勝訴を勝ち取ったのです。

 寺西さんは、「残業代ゼロ法案」について、「私の夫がそうであったように、成果を求められるほど労働時間は際限なく長くなっていくんです。…いったん制度が導入されれば蟻の一穴で対象が拡大していくことは目に見えています」と語り、同法案に強く反対しています。

 その上で、寺西さんは、連合の加盟組合が「“過労死ゼロ”宣言」を出していることについて、「本当に心強いです」と強調。連合がすべての労働者を守ってくれることを「心から期待しています」と語っています。

 東京の連合本部には、寺西さんのインタビューをポスター大に拡大して掲示しているといいます。トヨタ自動車労組も、連合内で「“過労死ゼロ”宣言」をした8852組織の1つです。
過労死 | コメント(3) | トラックバック(0) | 2015/03/22 11:38
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