◎トヨタが電機のIT労働者を引き抜くわけ

 メディアが伝える、JR南武線駅でのトヨタの広告が話題になっています。南武線は、神奈川県の川崎駅から東京都の立川駅まで、神奈川県北部と東京の南部を走る鉄道。沿線には、富士通やNEC、日立など電機大手の事業所が立ち並んでいます。

 「えっ!? あの先端メーカーにお勤めなんですか! それならぜひ弊社に」――こんな広告が駅に貼られているのです。しかも南武線限定です。NHKが8月9日に放送したのをはじめメディアがこぞって取り上げています。

 「シリコンバレーより、南武線エリアのエンジニアが欲しい」――アップルやグーグルなどの本社がある米シリコンバレーを意識し、日本の電機エンジニアのこころをくすぐるようなキャッチコピーです。

 NHK記者は、「あまりにストレートな表現に『これが本当にトヨタの広告なのか』と目を疑いました」と報告しました。「ネットやスマホの会社のエンジニアと、もっといいクルマをつくりたい」という広告もありました。

 「もっといいクルマをつくりたい」とは、トヨタの豊田章男社長が常に口にしている言葉です。トヨタは、愛知県に本社、工場が集中し、エンジニアの多くは愛知県に住んでいます。東京へ、しかも電機IT技術者へが集中する南武線沿線へ乗り込んでの技術者の引き抜きです。

70 NHK 南武線
(NHKの放送から)

 なぜ、トヨタがこんな引き抜きを? 自動車産業は今、ガソリン自動車以来の100年の大激動期といわれています。長年の夢だった人工知能(AI)が急速に実用化になり、自動運転が目の前にやってきました。

 また、ガソリンから電気自動車(EV)への転換が現実味を帯びてきました。英仏が2040年にガソリン車を禁止すると打ち出したことで、一挙に雪崩を打って移行しようとしています。ハイブリッド(HV)車で成功したトヨタも大転換を迫られています。

 自動運転では、グーグルがプリウスをベースにすでに走行実験をくり返しています。グーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトなどはAI技術で、日本をはるかにリードしています。あらゆるものがインターネットでつながるIoT技術をめぐって企業は熾烈な競争をしています。

 AIやEVなどに必要なのがIT技術者です。しかも即戦力が必要です。そこでトヨタが南武線沿線のIT技術者の引き抜きを考えたのでしょう。日本最大の会社のトヨタが、なりふりかまわぬ広告を出したものですから、メディアがこぞって取り上げているのです。

12 南武線
(南武線は、夜の11時を過ぎても混んでいます)

 この広告と軌を一にするようにトヨタが打ち出してきたのが事務・技術職への“裁量的働き方”です。8月2日付の日経新聞が1面で大きく取り上げたことで注目されました。

 トヨタがこの間、くり返し語っている「FTL」(Free Time & Location=時間と場所から自由になる)という働き方です。トヨタ労組の「評議会ニュース」にくわしく掲載されています。

 主任級約7800人を対象に、月17万円の手当(残業45時間分)、45時間を超えると残業代を支払う、在宅勤務を広げ、週2時間出社すればいい――などと、一見するといいことずくめです。

 南武線の駅近くに知人がいます。時折訪ねますが、夜10時過ぎ、11時過ぎても電車は混んでいます。スマホやタブレットを開いている労働者。電機のIT技術者のように見えます。

 電機IT技術者に、「FTL」の労働条件を示せば、引き抜きは可能――と考えるのは考えすぎでしょうか?

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職場は今 | コメント(2) | トラックバック(0) | 2017/08/11 10:21
コメント
No title
さすがトヨタですね。IT人材も待遇を
良くすれば入って来ます。
NHKさんもここまでバックアップとは
すごい!

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